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2009年4月21日 ● 癒される

カテゴリ : 無題

 癒される
http://www.youtube.com/watch?v=jI2DxkrgpgQ

 オレは、いったい何百回聞けば気が済むのだろう。
 昨日からスーザン・ボイルのCry Me A River を立て続けにかけて、うっとりしながら聞いている。何回聞いてもいい、母に抱かれた子のように心が安まる。こんなに惹かれた歌は初めてだ。

 スーザンの人柄からにじみ出してくる波動が素晴らしく心地よい。遠くの方に見える哀しみの景色が美しい。
 一昨夜、初めて見つけたニュースからユーチューブでの世界最多回数視聴記録を作った(1億回に迫りそうだ)オーディション動画を見ていて、涙が止まらなくなった。
 それからスーザンを検索していて、この歌を見つけた。
 こちらの方が桁違いに素晴らしい。静かなジャズの名曲、これまでにも聞いたことはあったが、これほど心を打たれたことはない。

 最初のとてつもなく澄んだ一節、 Now you say you're lonely に、いきなり横面をひっぱたかれて恍惚となるのだ。

  Now you say you're lonely You cry the long night through Well, you can cry me a river
Cry me a river I cried a river over you
 あなたは今、さみしいと言っている  長い夜を泣き続けるの そうよ、私のことで川のような涙を流せばいいのよ 川のような涙を 私はあなたに川のような涙を流したんだから
 Now you say you're sorry For being so untrue Well, you can cry me a river Cry me a river I cried a river over you
 あなたは今、悪かったと言う 誠意がなかったと そうよ、私に川のような涙を流せばいいのよ 私に川のような涙を 私はあなたに川のような涙を流したんだから

 メロディが心に響く、詩もいい。何よりも余韻が素晴らしい。エモーショナルな雰囲気が心を癒してくれる。
 そうだ、これは癒しの歌なんだ。ユーチューブでありったけの Cry Me A River を聞いてみた。オレの赤ん坊の頃、半世紀以上も前のジュリー・ロンドンのオリジナルだが、本人の歌よりスーザンの方が素晴らしい。

 どうして、こんなに心に響くのか?
 きっと、スーザンの人生に、そのまま乗って、奥底から響いてくるからなのだろう。
 スーザンの顔写真を見ていて、ある人を思い出した。
 オレが子供の頃から夢中になってきたギタリスト、アンドレス・セゴビアだ。目も輪郭も、二重顎のあたりも似ている。森久美子にも似ている。きっと、彼女は音楽家の顔なのだろう。
 どうみてもO型の人相だ。温かい心の持ち主なんだろう。彼女は男とキスもしたことがないと告白しているから、もちろん処女なのだろう。
 しかし、悲劇の主人公のような鬱屈ぶりは微塵も感じさせない。とてつもない明るさだ。にこやかな笑顔で、暗さのカケラも見あたらない。

 長い間、母親の介護をして歳をとってしまったという。母が亡くなって、その遺言に従ってテレビに出た。そしてチャンスを見つけ、突然、大爆発をした。
 その人柄の温かさを感じさせる澄んだ歌声が、ほとんどの視聴者の心を圧倒し、鷲掴みにした。一夜にしてスーパースターになった。
 しかし増長などしていない。元のままの、ありふれた普通のオバサンだ。

 イギリスという資本主義発祥の地、人間疎外の社会で、これまでの彼女の人生の苦しみ、疎外感はいかばかりか?
 数百年にわたって階級差別の硬直した偏見に満ちた社会だ。まるでインドのカースト制度を引き写したように、出生身分が一生涯を束縛する資本主義の奴隷社会が大英帝国の正体なのだ。

 スーザンの出生は知らないが、低所得者公営住宅に住む彼女の生活は、およそ想像がつく。母と二人暮らしの長い日々、そして看病。女に生まれたなら、誰だって男と出会い、エッチして子供を産んでみたい。
 それが許されなかった。
 表向き、何の苦悩もなさそうな明るいそぶりの裏に、満たされぬ辛い日々が潜んでいる。幸せを絵に描いたような家族が目の前を通り過ぎてゆく。笑顔を投げかけてみても、心が満たされるわけではない。
 こんなとき、人は苦悩の外に幸福の世界を作り出すのだ。
 思いが作り出す世界。幸せに満ちたイメージの世界。男女の愛憎の機微。孤独のなかに、明るい笑い声が響いてくる。
 人は天国を見いだすことができる・・・・心の内側に。

 こうして人は孤独のなかに、美しいものを作り出す。
 オレも同じだ。長い長い孤独に心が凍り付いていた。それを溶かし、癒してくれるものは音楽だった。美し旋律、心に響く優しさ。
 スーザンには、それがある。
 長い孤独のなかで醸造したえもいわれぬ銘酒のような香り。心の奥底の利他主義に満ちた暖かさ。長く辛い思いを経験した人間でなければ決して分からない深い同情。
 オレはスーザンの歌声に深く癒された。
 人を癒すことのできる者は、激しい苦悩に打ちひしがれた者だけだ。
 人生を捨ててしまおうと何度も思い詰めた者だけが、苦悩を乗り越えた、とてつもなく深い暖かみを醸し出すことができるのだ。

 今、たくさんの者たちが苦悩のどん底に喘いでいる。
 彼らもまた絶望を何度も乗り越えて、真実の価値に向かって歩み寄ろうとしている。何もかも失って、初めて人は、本当に必要なものを知ることができるのだ。
 スーザンは、それを知っている。

 我々がスーザンに熱狂させられるのは、彼女の心の奥底に、苦悩を克服した人間だけが持つ最高の暖かさ、人を癒す魔法の力に引き寄せられるからだろう。
 少なくともオレはそうだ。聞くほどに、彼女の人生の哀しみが深く美しく聞こえてくる。
 「オレだけじゃなかったんだ」
 と頼りになる連帯感がもたらす希望、元気を与えてくれるのだ。

 

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