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放射線・放射能測定の知識

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 放射線・放射能測定の知識http://admin.blog.fc2.com/control.php?mode=editor&process=load&eno=55#

 私は30年くらい前に放射線作業に従事したことがあって、そのとき、いくつかの放射線取り扱い国家資格を取得するとともに、放射線測定を学んだ。

 とはいっても、GM式サーベイメータで作業環境の測定をする初歩的なもので、環境に拡散してしまった放射能を測定するなど、高度な測定は、フクイチ事故後、すべて手探りで身につけたものである。

 今回は、たくさんの測定を行ってきた経験から得た、あまり知られざる知識を公開しておきたい。
 少し内容が専門的すぎて、わかりやすさをモットーにしてきた私の信条から外れるが、これ以上、わかりやすくする能力は私にはない。

 当時、私が測定上の知識として理解していたのは、ガンマ線がエックス線や紫外線と同じ光の粒子線であって、ただ波長だけが異なること。
 エネルギーが上がる=波長が短くなるにつれて透過力が強くなること。

 ベータ線が電子と同じものであること、空中での飛距離も1m以下であることなど程度であった。
 ベータ線が鉄骨などに当たったり、電界で進路を曲げらるとエックス線が出てくることも知識にあった。

 この程度の知識でありながら、フクイチ事故後の環境放射線測定は一定の成果があったと思うが、放射能の挙動と被害は複雑怪奇で、調べるほどに高度に専門的な知識が要求されることを知らされた。

 【放射線の基礎知識】

 まずは、放射線と放射能の違いについて。
 放射線はアイソトープ=放射能から出てくる粒子線のことで、アルファー線・ベータ線・ガンマ線・中性子線の四種類がある。厳密には、この数倍あるが、実用上は4種類覚えれば十分である。

 アルファー線は原子核のことで、一番質量が大きく、飛距離は数ミリと短いが、エネルギーは非常に大きい。
 外部から被曝しても、大半が衣類や皮膚で跳ね返され、ほとんど影響をもたらさないが、体内に入ると細胞を直接破壊する猛毒物質となる。

 ベータ線はエネルギーの高い電子と同じもので、これは外部被曝でも皮膚に強い放射線障害=ベータ線熱傷をもたらすことがある。
 体内に入った場合も、アルファー線ほどではないが、細胞に強い電離作用をもたらし、遺伝子を破壊する性質がある。
 内部被曝の危険度はアルファー線の10分の1程度である。

 ガンマ線は、光や電波と同じものだが、波長が普通の光より極端に短く、極めて物質透過性が強い。
 このため体内を通過するときに、電離作用によって細胞を破壊するが、その威力は内部被曝におけるアルファー線より弱い。

 セシウムやコバルトから発射される高エネルギーのガンマ線は、体内に電離被曝を与える前に突き抜けてしまう確率が高い。
 電離作用の危険性はベータ線と同程度である。

 ガンマ線の場合は100KeV以下のエネルギーの弱いものの方が皮膚や目の細胞に吸収されやすく、内部被曝でも突き抜けずに破壊を起こしやすいので危険性が高い。
 1KeV付近の軟X線は、紫外線と同様、皮膚に効率的に吸収されて皮膚ガンや白内障のイニシエータとなる。

 ICRPによる線質や線量当量評価が問題なのは、一番作用の弱いガンマ線外部被曝だけを重視し、アルファー線・ベータ線の内部被曝による遺伝子破壊作用を極端に軽視していることである。

 この理由については、ICRP線量等量評価報告書をまとめた張本人が、「原子力産業への配慮から内部被曝を千倍も小さく見積もってきた」と自白している。
 http://no-nukes.blog.jp/archives/7316790.html

 中性子線は極めて特殊な条件(原子炉や再臨界核燃料)などからしか出てこないので、水素によって遮蔽されるなどの基本知識を知るだけで十分である。
 JCO臨界事故のような場合には出てくるが、外部被曝のみで、体内を透過するとき水分の働きで減速して細胞構成原子を放射能化してしまう。
 被曝危険度は最高、ガンマ線の20倍に及ぶ。
 透過力はJCO事故のとき20K離れた家屋内でナトリウム24が検出されているので、実際には数十キロはあると思われる。

 フクイチから出た放射能のうち、内部被曝などで人体に害を与えるため、必ず知っておかねばならないのは上に述べた4種類である。

 放射能・放射線の測定には、先に書いたように、IAEA・ICRPの定めた概念に大きな欺瞞があるので注意が必要になる。

 放射線測定の基本は

① 放射線の種類 アルファー線・ベータ線・ガンマ線を見分ける
② そのエネルギーレベルを調べる
③ 線量率(単位時間あたり放射量)を調べる
④ 核種を調べる

 実際の測定に使われるのは
①GM管式
②シンチレータ式
③電離箱式
④半導体式
であり、シーベルト級線量を測定するときはセレン計などを使う。実用にはGMとシンチだけ覚えればよい。

 エネルギーと核種を見ることができるのはシンチレータ・スペクトル検出器のみであるが、基本的にガンマ線だけの測定になる。
 中性子やベータ線の測定は、専用のシンチ測定器が必要になる。

 GM管の場合、中性子以外の3種類とも検知可能だが、それぞれの線質別に測定するためには工夫が必要である。

 電離箱式の場合は、エネルギー依存性が非常に少なく、ほとんど補正の必要ないデータがダイレクトに取れるが、持ち運びなどで不利なことが多いので、屋外で使われることは少ない。

 【GM管式測定器の使い方】

 フクイチ事故以来、もっともたくさん使われている線量計がGM管式で、インスペクターやソエック・ラディックスなどが有名であるが、きちんとした使い方を知らないでいる人が多いので、必要な知識を書いておきたい。

 GM管式測定器は、検知管に入った放射線が一個一個、電気信号に変換されたパルスを計測する仕組みであるため、この数を数えてから定数に応じてシーベルト値に変換したり、そのまま毎分あたりカウント数(CPM)を表示する。
 ベクレルに換算する機種もあるが、理論的には無理なことで、核種をセシウム137に限定し、大雑把な参考値として示す程度である。

 GM管式で信頼のおける数値はパルス個数のみであり、シーベルトやベクレルへの変換は便宜的なものにすぎず、信用すべきでない。

 パルス個数でも、すべての放射線が100%パルスに変わるわけではないので、条件に応じた補正が必要になると理解していただきたい。

 とりわけ核種の異なるガンマ線の測定は厄介である。
 ガンマ線の検出効率は0.1~1%程度しかないため、セシウム137のガンマ線で更正するのが普通である。
 核種が変わるとエネルギー依存性のため、誤差が大きくなる。

 ベータ線の検出効率が100%近くあるため、少しでもベータ線のカウントが含まれると、過剰測定が生まれて正しい測定値が出にくい。このためベータ線遮蔽ケースを使う必要がある。

 基本的にGM管は、通過した電離放射線の数を数える測定器であって、エネルギーや正確な線量当量(シーベルト値)を知ることはできない。

 しかし、ベータ線の個数を調べるには高い感度を発揮し、高効率な測定が可能である。厳密に調べる場合は、ガンマ線・宇宙線の影響を排除するため10センチ厚の鉛遮蔽が必要になる。
 エネルギーや核種を調べたい場合は、シンチレータ式測定器を使う。

 通常の小型GM管のCPM:シーベルト(線量当量)変換定数は、1マイクロシーベルトあたり120CPM(毎分120カウント)前後が多く、インスペクターなどの大型管では同じく330CPM前後である場合が多い。
 この線量当量(生体細胞に対するダメージの単位)の値は適当なものであって信頼性に欠ける。

 線量当量率はセシウム137ガンマ線を基準にしてある場合が大半で、エネルギーの大きく異なる他核種の測定では校正補償が必要になる。
 GM管にはエネルギーレベルによる検出特性があって、1000KeVを超えたりすると、電離反応を起こす前に突き抜けたりして、検出効率が落ちてしまう場合があるため、エネルギー補償機構つきが望ましい。

 高価な測定器には自動補償、補正機能がついているが、安価な測定器では自分でエネルギー補正をしなければならない。

 測定器のエネルギー特性
http://blog.livedoor.jp/nijhousi/archives/52034643.html

 また入射個数が大きくなると分解時間を超えて窒息現象が起きるため数え落としが発生することになり、計算補正が必要になる。

 真の個数(CPS)=表示個数(CPS)÷(1-表示個数×分解時間)
 計算にあたっては、分解時間表記がマイクロ秒のため、10^-6とする。

 この場合、普通に使われている小型GM管の場合、分解時間(不感時間)が90マイクロ秒とすると、表示が10000CPM=83μSv/hの場合、1.8%程度である。30μSv/hあたりまでなら、ほぼ影響はない。

 インスペクターのような大型GM管の場合、分解時間40マイクロ秒、表示が毎分100000CPM=303μSv/hとして1666CPS。
 補正値は1785CPS、数え落としは119CPS=7140CPM、約7%程度になる。
 10000CPM(30μSv/h)の場合、0.6%程度しか数え落とさない。
 
 【放射能汚染地での使い方】
 
 フクイチ事故以降は、ほとんどの場合、放射能汚染地の空間線量の測定に使われているはずだが、この場合も、かなり予備知識が必要になる。

 まず、放射線というものは、毎秒ごとに安定した放出率があるわけでなく、非常にランダムで大数の法則に従うため、最低でも3分以上、可能なら10分以上計ってから平均値を求めないと正しい測定値にならないと知るべきである。

 GM管の電離信号が作動する電圧はプラトー領域と呼ばれる数百ボルトで、単三電池から数百ボルトをコンデンサに入れるだけで数十秒かかる。 (電力はほとんど消費しない、電圧をかけるだけで、電離があると「電子雪崩」を起こして信号に変わる。)

 数十秒以下の測定では、出てきた数値も安定せず、ノイズばかりの低品質なものになってしまう。
 測定器のスイッチを入れて電気信号が安定するだけでも1分程度を必要とするので、スイッチオンから「3分間待つのだぞ」を心がけていただきたい。

 安定した品質の高い測定値のためには、一カ所で30分程度、同一条件で測定して平均値を求めるのが正しい。このとき外部ノイズを排除するため、極端で、おかしな値を削除してしまって、中央値に近い標準偏差内の値だけを用いた方がよい。

 食品などの測定の場合は、必ず長時間測定を行い、外部BGの影響を排除するため、できるだけ厚い遮蔽箱を用いる必要がある。
 最低でもBGを半分以下にできる遮蔽箱は必需品であろう。これでも、分かるのは、キロあたり数百ベクレル以上の大きな汚染のみである。
 これでも原発放射能事故から1年は有効である。
 数ベクレルの汚染を知ろうと思うなら、厚さ5センチ以上の遮蔽のある精密測定器を使う必要がある。

 食品や土壌などの場合、遮蔽箱内で1時間以上のBG、平均値を採取し、サンプルを入れて30分以上の平均値を出し、BGから差し引くことで信頼性のある線量が測定できる。
 数カウントでもBGに対して明瞭な差が出れば、放射能汚染は想像以上に深刻と考える必要がある。
 産総研の校正用玄米を校正に利用すれば、正しいベクレル値に近い値を推定できる可能性がある。

 土地の汚染、空間線量率測定だが、必ず地上1mと地表の二カ所を測定する必要がある。
 またはベータ線を遮蔽する厚さ3ミリ以上のアクリルケースに入れて測定と、外して測定の二種類のデータが必要になる。

 理由は、汚染地のガンマ線空間線量と、地表のベータ線線量を区別するためであり、この差、乖離によって汚染が原発放射能由来であることが明確になるからだ。
 空間と地表が同じ値なら放射能汚染はないと判断できる。

 まず地面から1m以上、離すことで、アルファー線・ベータ線が届かなくなり、ガンマ線の線量率だけが残ることになる。
 次に、地表面を測定し、その値から1m空間測定値を差し引けばアルファ、ベータ線の地表における線量率が分かる。

 GM管のベータ線感度が良すぎるため、シーベルト値(線量等量)の表示される測定器では、セシウム137のガンマ線を基準に校正してあるため、地表のベータ線が含まれる測定値では、実際より、はるかに大きな値になってしまう。
 したがって地表の値は参考記録とし、土地の汚染値は1m空間値の方を採用しなければならない。
 このとき、ガンマ線しか計れないシンチレータ式測定器を併用すると、GM管式の値との乖離と補正すべき比率がわかりやすい。

 ベータ線だけの測定の場合は、シーベルト値を無視してCPM値、パルス個数だけを見る。
 放射線の個数を表示するGM管測定器では、ベータ線を、ほぼ全量を計測する性能がある。ガンマ線は0.1~1%%程度にすぎないので、全量ベータ線個数とみなしても大きな誤差は出ない。
 シーベルト値を見てしまうと、100倍以上の過剰値になるので注意されたい。(ラディックスのようにCPM表記のないGM測定器は使えない)

 【アルファ線の測定】
 
 GM管でアルファー線を計測する場合、特別な条件が必要である。
 まず、測定器の検出窓がマイカ(雲母)でできている必要があり、さらに測定口から検知窓までの距離が10ミリ以下である必要があるので、条件を満たしていない測定器が多い。

 アルファ線を測定する場合、必ず汚染を濾紙に拭き取り、移し替えてからGM管の窓で測定しないと、取り返しのつかないコンタミ汚染を引き起こす可能性がある。この方法を「スミヤ法」と呼ぶ。

 例えば、ダイレクトに「黒い粉」のようなアルファ線を測定窓につけて計ってしまうと、検出窓が微粉末で汚染されてしまい、この場合、マイカ窓の清掃は絶望的に困難である。
 いったん測定窓がアルファー線核種に汚染されたGM測定器は、以降ガンマ線の測定もできなくなる。
 アルファ線の空間飛程は最大数センチ程度が多いので、検出口まで汚染を拭き取った濾紙を近づける。
 このときコンタミ汚染を引き起こさないよう最大の注意が必要である。

 アルファ線が検知窓を通過すれば、検出効率は100%であるが、カウントが多い場合はベータ線同様の数え落とし補正を行う。
 正しいアルファ線の線量率を知るためには、標準の表面汚染、校正用線源が不可欠である。
 厳密な測定には、外部ガンマ線の影響を受けない5センチ厚以上の鉛遮蔽内での測定が望ましい。

 【シンチレーション式測定器で注意すべきこと】

 シンチレーション式測定器は、すでにGMからとって変わって測定器の主役になっている。
 大半の線量計がガンマ線しか測定できない。これは、ベータ線による過剰検出の影響を避けられる代わりに、フクイチ放射能由来であるベータ線を検出できず、放射能汚染の判断が困難である。

 シンチレータはCSI・NAI結晶が代表的だが、たくさんの種類があり、一長一短がある。
 基本的には、シンチレータ結晶を放射線が通過すると励起によって蛍光が発生し、それを光電増幅装置で信号に変えて記録する。
 放射線のエネルギーに比例した蛍光が起きるので、個数だけでなく、エネルギーや核種まで知ることができる。
 水素を含むシンチレータなら中性子の測定も可能である。

 昔は非常に壊れやすいもので、知人から借りて測定中にプローブを落として壊してしまい、修理代に10万円も支払った苦い思い出もある。
 今は、携帯型なら落としても壊れることは少ない。大型のものはガラス製の光電子増幅管が入っている可能性があり、割れやすいから注意が必要である。

 【私が使用しているシンチ測定器】

 私が使用しているシンチレータ測定器は、空間線量率を測定するタイプとして、テクノAP社のTA-100U、これは2011年夏頃購入したものだが、結構な価格で、長所としては、パソコンにスペクトルや線量率を記録保存可能ということである。
 短所としては、とても感度が低くて、土壌のスペクトルを測定記録する場合でも、最低1000ベクレル以上ないと、セシウムXも検出できない。
 それでも線量率グラフは、普段は見落とすジャイアントパルスも記録でき、時系列での比較が可能なので、空間線量率による地震予知などの道具として利用可能である。

 もう一つは、シンメトリックス社のIFKR254で、これは1インチのCSIを備え、感度も良く、5種類の核種を検出できる。
ただし、実用上は、K40とセシウムXの検出くらいしか意味はない。
 ビスマス214とヨウ素131の検出能力が欲しいが、いずれもセシウムXや鉛214のピーク内に入ってしまうので区別不能になってしまい、シンチレータの分解能(IFKR254は5%)では線量の検出は困難である。

 使用法としてはカメラ用三脚に収納容器を接続(三脚ねじを切ったもの)、地面から1m離した空間に計器を置いて、パソコンに接続、専用ソフトで時間ごとのスペクトルを記録、単位時間(1時間程度)に何個のガンマ線が通過したかを記録して、土地の汚染度と核種を調べる。
 
 コバルト60が検出された場合は、サムピークなどゴーストピークを見分ける必要があるため、土壌サンプルを採取して厚い遮蔽を持った専用スペクトル計で分析することになる。

 当時、70万円程度の価格で、性能から考えれば非常に安価だったが、その後、CSI結晶価格が暴騰して、現在は100万円を超えている。
 キチガイ政権による消費税の泥棒的値上げがあって、こうした高価品の購入は困難になっている。

 付属遮蔽装置を使えば、サンプルのベクレル測定も可能だが、キロあたり200ベクレル以上でないと誤差の少ない正しい値には、なりにくいので実用上は無理がある。

 【ベクレル計 】

 食品の放射能測定には、当初、普通のGM管を遮蔽箱に入れるスタイルで使っていた。
 しかし、GM管とバックグランド線量を半分程度遮蔽する組み合わせで得られる汚染の検出は、キロあたり300ベクレル以上で、それも数カウント程度の差であるから、放射能事故直後の緊急対応くらいにしか使えない。

 そこで最初に購入したのが、ドイツ製のスクーリング食品放射能測定器、EL25であった。
 これも結構な値段で、50万円以上したが、性能は期待外れで、カタログではキロ20ベクレル可能と書かれていたが、実際にはキロ200ベクレルがいいとこであった。
 それ以上のベクレル値ならば、結構正確で、数百万の高額品と大きな差はなかった。

 検出器は浜松ホトニクス製の2インチ薄型NAIが入っていて、相当に性能が良いものだが、遮蔽が10ミリ厚鉛では、薄すぎてどうにもならない。
 そこで、遮蔽鉛を別途購入、周囲に詰めて厚さ3センチ程度まで増やすと、やっとキロ100ベクレル程度は検出できるようになった。

 キロ100ベクレルでは国の規制値じゃあるまいし、やはり食品測定としてはキロ数ベクレル程度の検出能力が欲しい。
 だが、私の資力では、それ以上の精密測定器を購入することは不可能だった。

 そこに降ってわいたように、蕨市のIさんから測定器購入資金の協力の申し出があり、シンメトリックス社のIFKR254 やZIPを扱うことができて、本当に感謝している。
 もうIFKR製品は個人では手が届かないほど高価になっていて、普通なら触ることさえできなかった。

 【食品放射能測定器、IFKR-ZIP】

 この測定器は2012年ころ、シンメトリックス社の野中修司社長が開発したもので、キロあたり1ベクレル程度まで検出できる画期的な測定器である。

 当初の販売価格は150万円、もちろん私は買えなくて、蕨市のIさんの援助申し出にすがった。
 現在ではCSI価格の暴騰により200万円を超えている。あまりに高価なので、私が測定をやめたらIさんに返却する約束をしている。

 数百万円もするNAI測定器でも、実際の精度はキロあたり20ベクレル程度がやっとであって、1ベクレルという精度は驚異的なレベルである。

 最高精度とされるゲルマニウム半導体測定器でも、実質的な精度はキロあたり1ベクレル程度しか使えない場合が多い。
 理由はMCAの性能が悪く、10時間を超える長時間測定で、データの矮小化が起きてしまうからである。

 おまけに1ベクレル以下の精度にする場合は、1トンもの鉛遮蔽と、液体窒素によるサンプルと検出器の冷却が必要になり、多額のコストがかかる。
 民間測定所では運用コストに耐えきれず、液体窒素を使用しない測定も行われている。この場合、キロ1ベクレル以下の精度は出ない。

 ゲルマニウム半導体の分解能力は、我々の保有するシンチ計の50~100倍あって、性能的には太刀打ちどころではないが、1トンもの設備と液体窒素ランニングコストの負担を考えれば、諦めるしかないだろう。

 ZIPの場合は、常温測定で冷却不要、重量も50Kg程度しかない。
 外観は極めてコンパクト、ゲルマ機のように床改造も必要ない。
 CSIシンチはNAIに比べて温度ドリフトが3分の1以下なので、大げさな空調コントロールも不要で、測定器が10度以上40度以下なら正常に作動する。
 5度以下になると、さすがにゲイン調整が必要なドリフトが生じてくる。寒さには少し弱いようだ。

 サンプル容器は、ゲルマ機でもNAIシンチ測定器でも検出器センサーが円筒形であるため、それを覆うような変則的なマリネリ容器が使われる。
 ところが、この容器は複雑な形状のため、平均に詰めるには熟練を要し、平均でないと誤差が大きく出てくるのである。

 汚染サンプルは、検出器にガンマ線を届ける前に、自分自身による遮蔽で吸収されてしまうことがあり、これを自己吸収と呼んでいる。
 液体の場合はひどく、水の場合は3センチ厚を超えると自己吸収によって線量が大幅に低下してしまうため、マリネリ容器は、どこでも3センチ厚を超えない形状に設計されている。

 これに対し、野中修司氏は、市販のZIP袋を、そのまま測定容器にすることを思いついた。
 100×140ミリZIP袋なら、水を入れても3センチ厚を超えない。形状も一定している。
 この大きさだと、玄米が160gずつ、計320g入り、軽快なフットワークで測定が可能である。
 ZIP袋はホームセンターなど、どこでも安価に入手可能である。測定後、そのままサンプル資料として保全することも容易である。

 測定器に二つのZIP袋収容穴を設け、それを挟むような位置にCSI2インチ相当の結晶を置くことで、測定効率はマリネリ容器よりも優れたものになった。
 また驚異的なMCA性能と併せて、超長時間測定でもドリフトを起こしにくく、温度変化に強く、20時間の連続測定を可能にしたことで1ベクレルの精度を確保することに成功した。

 条件を整えれば、キロあたり0.2ベクレルでも検出可能であるが、数日間もかかってしまい、環境ノイズの影響を受けて誤差が多くなる。

 【1ベクレルのために】

 現在、IFKR-ZIPの公称精度はキロあたり3ベクレルになっている。
 理由は遮蔽が鉛40ミリと薄いことで、実は、この遮蔽力では、バックグランドの変化に対応した、安定した1ベクレル精度が出せないのである。

 BGをたくさん採取しても、BGごとに測定値が変動することになる。これでは1ベクレル精度を主張する資格はない。

 BGは時間ごとに変化し、降雨降雪で変化し、地殻変動や太陽風・宇宙線でも変化するため、これらの変動を遮蔽によって安定化させようと思うと、鉛100ミリの遮蔽が求められるのである。

 しかし、私が1ベクレル精度に固執する理由は、現在の凶悪な妄想に取り憑かれた反知性狂人政権がやがて自滅し、人間性にあふれた知性的政権が登場してくれば、必ず食品基準値がキロ1ベクレル以下という基準に正しく戻されると信じているからだ。
 我々は、キロ1ベクレル以下の飲食を保証される必要がある。

 そこで、私はZIPでの1ベクレル精度にこだわり続け、BGを選定するにあたって、数百本採取したなかから、3~5ベクレルのシンメトリックス社製校正線源を測定して、正しい数値を示すものだけを利用する。

 降雨時は測定を避け、できる限り遮蔽を強化、底や周囲に鉄板30ミリ厚や鉛を加えて、装置全体が装甲車のような遮蔽になっている。
 さらに、環境温度を適正に保ち、温度ドリフトなどノイズを出さないようにするなどの対策を行い、何とか1ベクレル精度が確保できていると考えている。

 このような素晴らしい精度は、MCA基盤の微分非直線性の精度によるもので、野中さんを狙う産業スパイが設計図を盗んで再現しようとしても無理、部品を改善しても不可能、あくまでも基盤組み立ての半田付け技量やノイズ低減回路の長い技術的蓄積から生まれるものである。

 これは、野中修司という国宝級電子回路職人にしかできない「匠の技」の世界なのである。まさに文化財級の製品というべきであろう。
 逆に言えば、IFKR製品は野中修司の人生とともに消えて、この性能を再現できる技術は存在しなくなるともいえる。

 もう3年以上使っているが、シンチレータ測定器のハードウェアとしての性能は文句なしに世界一だと思う。
 あえて文句を言えば、7%の分解能が大きすぎることくらいか。

 しかし、先に述べたBGの適正な選択に加えて、K40のコンプトン散乱やビスマス214の「揺らぎの干渉」による嵩上げ効果などがあって、使い方は容易ではない。
 
 せめてMCAソフトにK40コンプトン嵩上げ自動補正くらい世間並みにつけてくれと文句を言ったら、野中さんから、そんな甘いもんじゃない、世間のK40補正ソフトは全部インチキだと言われた。
 やはり、1ベクレルの世界では、いちいち個別のBGによる補正をする必要があるらしい。

 測定器の校正線源である産総研標準汚染玄米は、キロあたり30ベクレル前後のK40値がある。
 これを超え、測定サンプルのK40が40ベクレル以上あるとコンプトン散乱が1460Kピークの左肩になだらかな丘を作りはじめる。
 この丘の上にセシウムなどのデータが乗るので、結果が嵩上げしてしまうのである。K40が50ベクレルを超えると、もう1ベクレルですまない誤差が出ててくる。

 したがって、仮に大豆がK40=200ベクレルあったとすると、200-30=170ベクレルのK40補正BGで相殺することで嵩上げ効果が消える。
 この場合、10ベクレル程度の階段で、多数の異なるK40補正用BGを用意しておく必要がある。
 私の場合は、塩化カリウムを1g単位で水に溶かし、それに高分子ポリマーを加えてゲル状にしたZIP袋補正試料を数十袋も用意し、適宜利用している。

 実は嵩上げを起こすのはK40だけではない。
 降雨に含まれるラドンから出てくるビスマス214や、トリウム汚染から出るタリウム208などもセシウムのピークに含まれてしまい、その測定上の分布に含まれる揺らぎが嵩上げを起こす。

 これもBGに含めれば相殺可能だが、定量化とBG作成が困難なため、私は雨天時の測定は避けるようにしている。

 【放射能=ベクレル】

アルファー線、ベータ線、ガンマ線を問わず、アイソトープが一秒あたりに一回崩壊(塊変)し放射線を放出することを1ベクレルという。
 これが放射能の単位として通用していて、SI系単位改訂前は370億ベクレル=1キュリーであった。

だから、ベクレルやキュリーという表記だけでは放射能の重さや大きさ、危険度を示す単位にはならない。あくまでも、毎秒あたり、いくつの塊変が起きるのかという放射能量を示すだけの単位である。

 同じベクレル数でも、生物にとっての危険度や物理作用は、放射線の種類や内部被曝か外部被曝か、部分的被曝か全身被曝かの作用形態によって極端に違うので、ベクレル=危険度ではない。

 このため、細胞に与えるダメージを基準にしたシーベルト(線量等量・単位改訂前はレムで表記された)という単位も設定されているが、これも実務計算は極めて複雑で分かりにくい。

 ベクレル(キュリー)は放射能量を示す単位、シーベルトは生体細胞へのダメージを表す単位、そして、もう一つ、グレイ(吸収線量)という単位があり、これが放射線の物理エネルギーの尺度になる。

 グレイとは、放射線が当たる物質1キログラムあたりに吸収されて熱エネルギーに変わるエネルギー量を示す。
 本来はジュール/キログラムと表記されるべきだが、ICRPはグレイという単位を用い、単位改訂前はラド=1グレイ/100 で表記された。

 1Kgの物質に1ジュールのエネルギーが吸収される線量を1グレイと呼ぶ。1ジュール=0.24カロリー 1気圧で20度の水、1gを0.24度上昇されるエネルギーに相当する。

 ガンマ線の場合、グレイ≒シーベルトで、約7グレイ≒7シーベルトのガンマ線を浴びると、100%致死量
4グレイ≒4シーベルトで半数致死量になる。
 だからガンマ線被曝の致死量は、体温を上げるほどのエネルギーには、ほど遠いことがわかる。
 人間の五感には、まったく感じないうちに死んでしまうのである。

 放射線関係の単位は、同じものを表すのに、たくさんの表記があって、実に複雑、一般大衆が誤解するような表記が多い。
 これは放射線実務を難解なものとして大衆から遠ざけようとする国際原子力産業の意図が働いているのだろうと思う。

 放射線が通過した細胞におけるエネルギーの吸収率(発熱量)や、それによって与えられるダメージを数量化する狙いで設けられた単位であるが、内部被曝のダメージを極端に軽視したい原子力産業の意向を汲んだICRPによって、正しい被害評価ができなくなってしまっている。

 【ベクレル測定上の注意点】

 ベクレル測定は、フクイチ放射能事故が起きるまで、まったく経験がなく、知識もなく、教書もほとんど見あたらなかったので、本当に手探りで失敗を重ねながら経験を積むことになった。
 私の技量では、とても有料化できないので、この3年間は無償で測定して、技量の習熟をいただいたという印象である。

 食品や土壌、飲料水の汚染は基本的にベクレルで表記する。

 毎秒、いくつの塊変を行うのか? という単位だが、普通はキログラムあたりの重さで表記し、100Bq/Kgのように書く。

 土地の汚染については、地表から5センチの深さまで土壌を採取し、キログラムあたりのベクレル数を出して、これを65倍した数値を平米あたりベクレル数としている。
 航空調査などでは、キロ平方メートルあたりのベクレル数で表されることも多い。この場合は、ベクレル単位もメガを使ったりして実に煩雑である。

 食品の測定で注意が必要なのは、サンプルをマリネリ式測定容器に正しく詰めることに熟練が必要で、詰め方次第で20%程度の誤差が出てくる可能性があること。
 IFKR-ZIPなら、ただZIP袋にいっぱいに詰めるだけで良い。

 食品は、可能な限り粉砕し、ペースト状や粉末状にした方が正しい値が出る。私は大半の場合、フードプロセッサを使用している。

 キロあたり1ベクレル程度の測定には、ZIPの場合10~20時間必要である。NAIシンチでは遮蔽を強化しても、キロ10ベクレル程度の精度しか出ない。長時間測定するとデータが矮小化してしまうのである。

 飲料水の場合、東京都水道水のセシウム汚染はリットルあたり、0.001ベクレル付近なので、そのままでは測定不能である。
 CDクリエーションの鈴木氏が研究の結果、100リットル程度の水道水をイオン交換樹脂やゼオライトに吸着させて、樹脂側を測定することで見えない汚染を可視化することに成功している。

http://cdcreation.grupo.jp/blog/1193538
 
 100リットルの水道水を風呂桶に溜めて、バスポンプなどを利用して循環させ、イオン交換樹脂に通すことで樹脂がセシウムを吸着する。
 全量吸着できたかは、TDSメータを使い、水が0PPMを示せば吸着終了として、樹脂を測定する。

 NAI測定器では、MCA特性から長時間測定での誤差が大きくなるため、規定時間=最大数時間程度の範囲で測定しなければならない。
 10時間以上ではデータの矮小化が起きてしまう。IFKR-ZIPの場合は、20時間でも測定可能だが、やはり、わずかな矮小化が起きるので。可能なら5~10時間程度にとどめるのがよい。

 何度も書いたが、一番大切なことは、雨天での測定を避けることである。
 雨には多くのラドン222が含まれ、娘核種のビスマス214が609Kのガンマ線を出すため、5センチ程度の遮蔽を透過して、スペクトルデータに609Kのピークを作ってしまい、 これがセシウム値を嵩上げしてしまうのである。

 似たような降雨時のBGを採取して補正できなくもないが、定量化が困難で、厳密な値を出すのは難しい。キロあたり5ベクレル程度より悪い精度でもかまわなければ、多少の降雨は無視してもよい。

 ビスマス214とタリウム208は、セシウムXのピークに近いため、イタズラをしてセシウム値を嵩上げすることが多いので、よほど注意が必要である。
 せっかくK40を補正してもビスマスに邪魔されることも少なくない。ビスマス214の補正用BGを作るのは、かなり困難で、降雨BGデータをたくさん集めて適宜利用するしかないだろう。

 【ゴーストピーク】

 ベクレル計から得られた測定スペクトルのなかにはゴーストと呼ばれる実体のない幽霊ピークができることに気をつける必要がある。

 ①コンプトン散乱

 セシウム137が光電効果を起こせば662K相当のシンチレーション光を発するが、コンプトン散乱(非弾性散乱)を起こすと、それより184K低い478K付近にコンプトンエッジというゴーストピークを作りながら、左肩に緩やかに下がってゆく散乱線を作る。

 一番影響が大きいのが、どこにでも大量に存在するK40で、このコンプトン散乱がセシウムなど目的核種のベクレル値を嵩上げしてしまい、測定の邪魔をすることが多い。

 K40のコンプトン散乱では、本当のピークが1461Kであるのに対し、1244K付近にゴーストピーク(コンプトンエッジ)ができる。
近似式は、コンプトンエッジまでの距離=求める核種のMeV/(1+求める核種のMeV×3.91)
 1.461/(1+1.461×3.91)=0.217 本来のピークより217K下にエッジ。
1.461-0.217=1244 1244KeVにコンプトンエッジができるわけである。

 おおむね500Kから5000K程度のガンマ線で問題になることが多い。

 ②サムピーク

 シンチ結晶体に、2本のガンマ線が同時に進入すると、両方のエネルギーを足し算したピークが記録されることがある。
 これがゴーストピークの代表で、実体のないピークを作ることで核種検出の大きな障害になる。

 セシウムは605K・662K・796Kのガンマ線を出すが、605+662=1267 605+796=1401k 662+796=1458K などのサムピークがスペクトルに現れることがある。
 本当に、そんなエネルギーがあるわけでなく、偽の幽霊ピークであるが、分解能の低い測定器の場合、他核種のピークに紛れ込み、誤検出や過剰検出を招くことがある。
 
 ③ 電子対生成

 電子対生成は1020K以上のエネルギーを持ったガンマ線が原子核の近くを通ると511Kの陰陽電子の対生成を起こしてガンマ線が消えてしまう確率があることをいう。

 逆に、511Kの陰陽電子がぶつかると電子対消滅で1020Kのガンマ線を生成する。
 K40、コバルト60やタリウム208などの強いガンマ線で起きやすく、511Kと1020K付近のピークは対生成の影響を考える必要がある。

④ 後方散乱 制動X線

 強いベータ線の出るサンプルでは、ベータ線が鉛遮蔽に当たって特性X線(制動X線)としてピークを作ることがある。
 また、サンプルから出たガンマ線が検出結晶以外の方向に出て、鉛遮蔽で散乱されて波長を変えることがある。
 ただし、これらの確率が測定を邪魔することは少ない。


 【最後に】
 現在、私の家ではIFKR254・ZIP・TA100Uは常時通電し、24時間稼働している。
 このために専用のパソコンも置いている。
 ZIPは大量のBGを採る必要があるし、254は環境放射線量の変化を見るのに必要であり、TA100は線量時系列変化を見て地震予知に利用している。
 大きな地震が近づくと、ジャイアントパルスという極端に高いパルスが消えてしまい、平均的に線量が低くなるのである。
 またラドンの噴出を調べるためにも254の時系列観測は欠かせない。

 フクイチ事故後、測定器の大量需要からシンチ結晶の暴騰があって、測定器価格が大幅にアップしているなかで、とりあえず在庫を保有していたシンメトリックス社の測定器が安く入手できて本当に助かった。
 もう、今後、我々の手に入ることはないだろう。

 シンメトリックス社では、最新測定器として、サムピークやコンプトン散乱などの影響を受けないダブルシンチレータのZIPPROを発売中だが、高級車を一台買えるほどの価格になってしまった。
 しかし、食品関連企業が、将来の1ベクレル規制を考えるなら、信頼性の高いZIPPROを購入すべきだと思う。

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