ファッシズムと優生保護

 ファッシズムと優生保護  2017年2月26日

 2016年7月26日の朝、我々は目を疑うような恐ろしいニュースに接した。

 相模原市にある障害者施設で、19名死亡26名重軽傷という大量殺傷事件が報じられたのだ。

 犯人は植松聖という名の施設の元職員で単独犯だという。

 いわゆる大量殺人というものは、80年前、1938年の「津山32人殺し」というもの凄い事件が知られていて、郷土史や民俗学を学ぶ者なら日本近代史最大の特異事件として誰でも知っているし、この事件をモデルに横溝正史が八墓村を書いて、たくさん映画化されてるから知名度が高い。

 津山事件の原因は、部落差別を受けていた青年が好意を持っていた女性宅に「夜這い」(西日本では結婚前の適齢期女性に対し、近所に住む若者が夜中に忍び込んで性交を求める習慣があった)に出かけ、身分を理由に拒絶されたことから怒り狂って起こしたという説があり、この種の異常事件の多くに差別問題が絡んでいるのは事実である。

 しかし、セキュリティの大きく進化した現代にあって、同じような大量殺人が本当に再現されるなどと予想した者は皆無に近かったのではないか?

 「あれは小説の世界であって、この情報化社会に、そんな馬鹿げた一気大量殺人が起きるはずはない。もし殺人が起きても、すぐに通報されて、たくさんの人を殺すなんてできるはずがない。何よりも動機があるはずがない。死刑になるほど殺して何のトクになるんだ。」

 みんな、そう思っていた。

 実際には10名前後の被害死者を出した大量殺人事件は、戦後だけでも十数件起きていて、ほとんどの場合、一度にではなく嗜好性の強い連続強姦続殺人である。
 例外はオウム真理教事件と、この相模原事件である。
 
 19名殺しの植松は希に見るほど強固な思想的確信犯であった。
 おそらくオウム信者による宗教的洗脳犯罪よりも、さらに強烈な優生保護への観念的確信を持っていた。

 「障害者は国家の邪魔者であり、死なせた方がよい」
 との強固な信念を持って大島衆院議長と安部晋三首相あてに事前(2016年2月13日)に上訴状を渡し犯罪を予告している。

 手紙の内容は

【 私は障害者総勢470名を抹殺することができます。
 常軌を逸する発言であることは重々理解しております。しかし、保護者の疲れきった表情、施設で働いている職員の生気の欠けた瞳、日本国と世界の為と思い、居ても立っても居られずに本日行動に移した次第であります。
 理由は世界経済の活性化、本格的な第三次世界大戦を未然に防ぐことができるかもしれないと考えたからです。
 私の目標は重複障害者の方が家庭内での生活、及び社会的活動が極めて困難な場合、保護者の同意を得て安楽死できる世界です。
 重複障害者に対する命のあり方は未だに答えが見つかっていない所だと考えました。障害者は不幸を作ることしかできません。
 もし殺戮実行に成功したなら、二年で免責の上、5億円もらいたい。】

 というもので、想像もできないほどの独善性と論理的飛躍、異様なナルシズムのなかにも、差別社会システムのなかで、誰もが共有しやすい優生保護思想の極端なリアリティ=「役に立たないものを排除する」発想が鮮明に見えていて、この事件が、実は日本国内に歴史的に蔓延してきた「優秀な者だけ残し、無用なものは排除抹殺する」という選別選択の差別=優生保護思想の極端な結実であることを示すものであったといえよう。

 それが証拠に、自民党や右翼から、たちまち大量殺人犯、植松聖への共感者、支持者がたくさん現れた。

http://lite-ra.com/2016/07/post-2459.html

「自民党ネットサポーターズクラブ会員として愛国という視点から自らの意見を論理的に述べる。重度障害者を死なせることは決して悪いことではない」
 とブログで公然と、植松への支持を公表する者さえ登場した。

 「植松の言葉自体には実は聞く価値のある部分もある。それは『障害者は邪魔である』」という観点だ」

 「考えてみてほしい。知的障害者を生かしていて何の得があるか?
 まともな仕事もできない、そもそも自分だけで生活することができない。もちろん愛国者であるはずがない。日本が普通の国になったとしても敵と戦うことができるわけがない。せいぜい自爆テロ要員としてしか使えないのではないだろうか?つまり平時においては金食い虫である。」

 「この施設では149人の障害者に対し、職員が164人もいる。これではいくら職員を薄給でき使わせたところで採算が取れるはずもない。そんな状況では国民の税金が無駄に使われるのがオチである。無駄な福祉費を使わなくて済ませることが国家に対する重大な貢献となる。だからこそ植松が言うように障害者はいなくなるべきなのである。」

 この男は、7月9日に石田純一の都知事選立候補の意向の報を受けて
 「都知事になりたいならばまずは自分の子を死なせてからにするのが筋であろう」とも書いている。

 「石田には東尾理子との間に子供が1人いるが、そいつはダウン症である。つまり育てるのにカネがかかる。東京都知事は言うまでもなく公務員である。公務員は国民のために尽くすのだから無駄遣いをしてはいけない。だからこそ無駄遣い以外の何物でもない子供は死なせるべきなんだ。無駄な医療費を使わなくて済むのだからこれは国家に対する重大な貢献となる。政治家なのだから率先して自分の子供を見殺しにできるようにならなければいけない。」

 「野田議員の子どもは重い障害をもっており、1年で9回の手術を受け、脳梗塞になり産まれてからずっと入院、人工呼吸器を装着し、経口摂取は不可、右手右足に麻痺が
 だからこそ野田は総理大臣になりたければ、無駄遣い以外の何物でもない子供の治療を即刻辞めるべきでなのだ。もちろん死んでしまうが無駄な医療費を使わなくて済む。これこそ総理大臣に求められる国家観だ。」

  (この野田聖子氏に対する投稿には7000を超える「いいね!」がついている。これが自民党の若者たちの思想ということなのだろう。)

 この自民党ネトサポは、ブログに安倍HPをリンクし、熱烈な安倍晋三シンパであることを自慢している。
 我々、反原発派のツイッターアカウントに下劣で執拗な嫌がらせ工作を仕掛けてくる者たちも、大半が安倍信者であって、アカウントプロフィールには「日本が好きです、安倍政権断固支持」と書き込んでいる者ばかりである。

 これを見ると、植松聖が決して特殊な精神病質者ではなく、安倍政権支持者の若者たちの標準的な思考であると見なければならないのである。

 ネトウヨ信者のご本尊である安倍や麻生自身が、「美しい日本」というスローガンはじめ、国家に役立たない者は排除せよとの主張を繰り返してきた。
 障害者も老人も、日本社会から弱者を排除した上で見せかけの「美しい日本」を外国に対して宣伝してゆこうということか?

  https://www.youtube.com/watch?v=vFN7eTucz-U

 ブログ主(自民党を代表する論客?)は、こう結ぶ。

 「こういう自分勝手な人間が増えたのも日本国憲法のせいである。自由を謳い、権利を行使しなくてよいという天賦人権論(すべての人間は生まれながら自由平等であり、誰もが幸福を追求する権利をもつという憲法の基本理念)が日本人を堕落させた。
 だからこそ自民党は天賦人権論を否定する憲法案を出した。この憲法が通れば国民の血税を使っても他人に対する感謝の心を持てるようになる。」


 優生保護とは何か?

  http://www.soshiren.org/yuseihogo_toha.html

  http://www.mskj.or.jp/report/2899.html

 実は、戦後日本には世界中の人権活動家から糾弾され続けた「優生保護法」という犯罪的な反人権法がまかりとおり、凄まじい人権侵害が正当化されてきた。

  http://www.nichibenren.or.jp/library/ja/opinion/report/data/2017/opinion_170216_07.pdf

 不良遺伝を淘汰するという理屈を掲げ、知的障害者、ライ病、精神病などに罹患している場合、本人の同意を得ずに勝手に中絶堕胎し、不妊手術まで行った。
 その被害者は、記録が保存されているだけで10万人の単位である。

 日本国民に「不良形質」の遺伝を阻止するという名目で、個人が子を作り生み育てる基本的人権中の人権を国家権力が強制的に支配し、数十万人以上の人権を根底から剥奪し、胎児を強制殺害したのである。

 まさに安部晋三が主張する理想社会、国家が国民の基本的人権を剥奪し、支配する「美しい日本」がそのまま体現されている極悪中の極悪法であった。

 これが世界中から批判を浴びて廃止されたのは、実に1996年であり、まだ20年あまりしか経っていない。

 

 植松聖の「障害者は国家の邪魔者」との思想は、実を言えば、歴史の中で普遍的に顔を出し続けている。

 もっとも端的で恐ろしい結果をもたらしたのはナチスであった。

安楽死計画──暗号名「T4作戦」

 http://inri.client.jp/hexagon/floorA6F_hb/a6fhb700.html

 ナチスは、優生保護思想「国の役に立たない邪魔者は始末する」という発想を忠実に実行し、障害者、重病人、精神病者などを中心に、片っ端からガス室に送り込んだ。

1939年から1941年8月までに、約7万人の障害者が「生きるに値しない生命」として、抹殺された。
 これは、もっとも少ない見積もりである。

 一般的に公表されているのは26万人、第二次大戦全期では40万人を超えるとする資料もある。

 最初はドイツ各地の障害者施設にいる子供たちを連れ出してハルトハイム城やグラーフェネック城に設けたガス室に送り込んだ。
 使われたガスは、トラックの排気ガスで、一酸化炭素中毒死させられた。
 やがてユダヤ人殺戮と同じ、チクロンという塩素ガスが使われた。

 植松聖が逮捕後「ヒトラーの思想が自分に降りてきた」と言ったのは、このT4作戦を指すのだろう。

 この計画は1941年8月、突然、中止命令が出された。
 理由については諸説あるが、ヒトラーが実家に帰省したとき、近所に住む叔母から「私の子供が連れて行かれて帰ってこない」 
 と激しく糾弾されたからだとも言われる。

 だが中止命令後も、それを無視してドイツ敗戦の直前まで、障害者殺戮が続けられたと記録されている。


 優生保護思想は、どこから生まれるのか?

 日本は世界でも指折りの競争国家であり、すなわち優生保護国家である。

 「お国のために役立たぬ劣った者は排除し、優秀な者だけを生かす」
 この選民主義の価値観の下、数十万という「劣った」人々の命と人権が強制的に奪われてきた。

 まず自分が通った保育園、幼稚園、小中学校で、どのような思想教育を受けてきたか思い出してみればいい。

 私の子供時代は、半世紀以上前のことだが、学校が最初から最後まで一貫していたのは、子供たちを選別するということであった。

 子供たちの、すべてをランク付けし序列化し、上位の子を褒め、下位の子を叱りつける。「よい子・悪い子」 の基準は、学校にとって、社会にとって、国にとって、であって、その子にとっての価値は皆無だった。

 運動会で一番になれば褒められ、絵が上手なら褒められ、テストの成績が良ければ褒められ、こんな選別ランキングの繰り返しが学校教育の本質であった。
 失敗した者、劣った者は、あたかも人間としての資格がないように決めつけられた。

 このような価値観に、どっぷりと浸かり洗脳されてしまった子供たちが、どのような考え方をするようになるか、考えてみればよい。

 価値の高いものには従順に従うが、外れているもの、価値が低いとみなされるものに対しては徹底的に侮蔑し中傷し、痛めつける=イジメが発生するのである。

 私の通った半世紀前の学校でも同じであった。私も、毎日いじめられるために学校に通い、卒業しても絶対に同窓会に顔を出そうという気になれなかった。

 子供たちは、学校側、大人の用意した価値観だけに洗脳され、他人に秀でること、一番になること、多く蓄財し、大きな権力を得て他人を見下すことだけが正義だと勘違いさせられてゆくのである。

 弱者に対する優しさ、連帯感、弱者こそが社会の底辺を支えているという真実は何一つ見えなくなってゆく。
 高級車にのって、我が物顔に優越風を吹かせ、他人を嘲笑する者が立派な人間と勘違いさせられてゆくのである。

 こんな連中=麻生太郎・安部晋三らが、弱者である障害者を見て「お国のために役立たない邪魔者」と決めつけ排除し、社会から追放しようとするのは、ごく自然な成り行きであって、すなわち、これがファッシズムの本質というべきなのだ。

 ファッシズムという思想は、選民思想のなれの果てであって、優生保護思想とまったく同じものであり、「この社会に無駄なものは何一つなく、すべて相互作用で社会を支えている」という連帯感の対局にある独善である。

 それは自分が、あたかも「他人より優れている」という愚か極まりない勘違いの上にのみ作り出される。
 幼児の時代から、競争に勝てば褒められるという価値観の上に構築された幻にすぎないのである、


 

 
 

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