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原油価格問題の良質な記事があった

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 原油価格の行く末について考察するための良質な情報を提供している記事を見つけたので転載する。

 コロナ禍の裏で原油価格大暴落、その原因と行方 3/28(土)
 https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20200328-00059920-jbpressz-int

 以下引用

 ■ プロローグ 油価暴落は米国のシェールオイル潰し? 

 油価が暴落しています。
 理由は2つあります。(1)2020年3月6日の石油輸出国機構(OPEC)と非OPEC主要産油国のOPEC+会議が決裂したこと、(2)新型肺炎コロナウイルス蔓延による経済活動停滞に起因する石油需要の減退です。

 3月6日のOPEC+会議の前、(上場企業では)世界最大の石油会社ロスネフチのI.セーチン社長はロシアのV.プーチン大統領に追加減産に賛成しない旨を説明し、同大統領は了承したと伝えられています。

 ただしロシアとしては現行120万bd(日量120万バレル)の協調減産には賛成しており、交渉決裂後にサウジアラビアが直ちに原油増産を発表して油価が暴落したことは、ロシアにとり想定外でした。

 3月下旬には北海ブレントや米国WTI(West Texas Intermediate)などの主要油価はバレル$30を割り、$20台で推移しており、年初比半値以下になっています。

 一方、油価暴落に関しては予想通り、「陰謀説」のようなトンデモ論も出てきました。

 「米国のシェールオイル潰しを狙い、ロシアとサウジアラビアが共謀してわざと交渉決裂を演出し、油価暴落を仕組んだ」との陰謀説がまことしやかに流れています。

 一見、分かりやすい論調ですが、これは本当でしょうか? 
 本論では、今回の油価暴落の背景と今後の油価動静を予測してみたいと思います。

■ なぜ追加協調減産に反対したのか? 

 日本のマスコミで報じられたことはありませんが、ロシアがOPEC+会議で追加減産に反対したのは、原油を増産するためではなく、これ以上の減産は物理的・技術的に不可能だからです。

 西シベリア鉱区の油層圧は低くなっており、バルブを締めて減産すると、将来バルブを開けても原油採取が不可能になってしまいます。

 一方、サウジアラビアの原油鉱区の油層圧は高く、自噴原油が多いので、バルブを締めて減産しても、バルブを開ければまた原油は採取されます。

 もう一つ理由があります。
 それは、西シベリア産原油はワックス分が多く、油井で採取された原油を原油処理施設に輸送するフィールド・パイプラインの中で原油が常に流れていないと、ワックス分がパイプ内部に付着して、パイプラインが動脈硬化を起こします。

 また、冬場は原油の中に含まれる水分が氷結してしまいます。
 ですから、常に原油を採取して、パイプラインの中に原油を流しておくことが必要になります。これが今回、ロシアが追加協調減産に反対した理由です。

 反対した結果、協調減産枠自体が消滅して、油価は暴落しました。
 では、油価は今後どうなるのでしょうか? 

 結論を先に書きます。ロシアとサウジアラビアは早晩、協調減産交渉に入るでしょう。双方は現行の協調減産水準で妥協し、枠組み再構築に合意。その結果、油価は再度上昇すると予測します。

 ■ ロシア経済は油価依存型

 ロシア経済は油価に依存しています。油価が高くなればロシア経済は発展し、油価が下がれば経済は縮小します。油価とロシア経済の相関関係は以下の通りです。

■ ロシア財務省 2006~2019年の国家予算収支実績発表

 ロシア財務省は2020年3月5日、2006年から2019年までの国家予算収支実績を発表しました。
 ロシア国庫歳入と石油・ガス税収と油価の関係をグラフ化すると、以下の通りです。
 ちなみに「石油・ガス税収=地下資源採取税+石油・ガス輸出関税」にて、LNGは輸出関税ゼロです。 

 2020年の露国家予算想定油価(ウラル原油)はバレル$42.4ですが、露政府の油価予測は$57です。
 すなわち、油価予測は$57ですが、国家予算歳入案は油価$42.4を前提として計算されています。

 油価が$42.4以上の場合、追加税収(主に輸出関税)は石油基金たる「国民福祉基金」に入ります。
 逆に現在の油価低水準($30割れ)で推移する場合、2020年の黒字予算案は赤字予算になります。

 ロシア財務省は3月9日、「現在の油価水準の場合、国庫歳入は約2兆ルーブルの減収になり、GDP(国内総生産)を0.9%引き下げる」と発表(註:2兆ルーブルは約300億ドル)。

 これを受けNovakエネルギー相は3月10日、「現在の油価水準でも、国民福祉基金が1500億ドル(註:原文のママ)あるので、6~10年間は持ち堪える」と発言しました。

 ご参考までに露石油基金「安定化基金」は2004年1月、A.クードリン財務相(当時)により創設されました。

 「安定化基金」は2008年2月、「準備基金」(予備基金/約1200億ドル継承)と「国民福祉基金」(次世代基金/約370億ドル継承)に分割されました。

 準備基金の目的は国家予算が赤字になった場合の補填用原資、国民福祉基金の主目的は年金補填や新規優良プロジェクトへの投融資でした。

 準備基金は国家予算赤字補填用基金になりましたが、2017年末までに払底したため2018年1月に国民福祉基金に統合され、2020年3月1日現在の資産残高は1231億ドルです(ロシア財務省発表)。

 なぜ準備基金が払底したかたと申せば、国家予算の赤字を補填したため、準備基金が消滅してしまったのです。

 上記のグラフの通り、2015~2017年は油価下落により国家予算が大幅赤字となり、その補填用に準備基金から支出されたため、準備基金が消滅してしまいました。
 2020年は$42.4を前提に予算を組んでいますので、国家予算は大幅赤字必至となりました。

 ■ 米国のシェールオイル生産量推移

 ご参考までに、米EIA(エネルギー省エネルギー情報局)が公表している米原油生産量推移は以下の通りです(原油にはコンデンセートを含む)。

 米国における原油生産量は2000年代の後半から上昇に転じましたが、これはシェールオイルの生産が増加したためです。
 シェールオイルとは頁岩層の中に含まれている炭化水素です。粘土の中に原油や天然ガスが入っているイメージです。

 昔から頁岩層の中に炭化水素資源が含まれていることは分かっていましたが、採取する技術もノウハウも経済性もありませんでした。
 米国では2000年前後から細々と生産されていましたが、2003年頃から油価が上がり始めると、従来経済性がないと思われてきたシェールオイルが段々と脚光を浴びるようになりました。

 採取技術(水圧破砕法)が向上すると採取コストも下がり、現在ではバレル$40程度が損益分岐点と言われています。
 米国は2018年に世界最大の産油国になり、2018年の原油生産量は1099万bd(日量1099万バレル)、2019年は1223万bd(うち、シェールオイル64%)。2020年の生産量予想は1230万bdです。

 ただし、シェールオイルには一つ欠点があります。
 1本のシェールオイル油井の寿命は約3年間です。ゆえに次々と投資(新たな採掘)を続けないと短期間で生産量が激減してしまうという、構造的な問題・弱点があります。

 かつ多くの業者はシェール専業の中小企業であり、ロシアやサウジアラビアの石油会社とは規模も資金力も違います。
 ロシアとサウジアラビアが共謀して原油を増産し、油価が下落すれば、米シェール企業は倒産してしまいます。これが陰謀説の根拠ですが、筆者はこの陰謀説には与しません。

 世界の景気は新型コロナの影響で経済活動減退・石油需要減少・油価と株価暴落により、多くの企業がこれから連鎖倒産するでしょう。
 企業倒産が増加すれば、次に恐ろしいのは金融危機です。世界的な金融危機が起きれば、世界は再び大恐慌に陥ることになりましょう。

■ OPEC+会議決裂(2020年3月6日)

 OPEC臨時総会が2020年3月5日、オーストリアの首都ウィーンで開催されました。
 この臨時総会では、現行の今年3月末まで有効の120万bd協調減産+昨年12月合意の追加50万bd+サウジアラビアの自主減産40万bdに加え、4月1日からさらに150万bd減産の計360万bdの協調減産で合意しました。

 ところが翌6日に開催されたOPEC+会議にてロシアは「現行120万bdの協調減産には賛成。ただし、新規150万bdの協調減産には反対」と主張しましたが、結果として枠組みそのものが崩壊。

 これはロシアの本意ではなかったはずです。
 ましてや、3月9日にサウジアラビアが大増産構想を発表して、ウラル原油の主要売り先である欧州市場(主にオランダ)向けにBrent油価の$10引きの$25の価格で、同品質油種たるアラビアン・ライトを乙波するとは想定外の出来事でした。

  この3月6日の交渉決裂を受けサウジアラビアは9日(月)、4月1日以降の原油増産構想を発表したため油価は暴落し、露ウラル原油はバレル$30を割り込みました。

 3月19日付日刊紙Vedomostiは、「石油市場における油価戦争は誰にとり有利か?」と題する長文解説記事の中で「この油価戦争において勝利者は存在しない」と報じており、筆者もまたそのように考えております。

 3月下旬現在では、北海Brentも米WTIも既にバレル$20台となり、瞬間的には$20を割りました。
 米国のシェールオイルの損益分岐点はバレル$40程度と言われており、現在の油価水準が続けば米シェール企業は倒産します。

 油価下落戦争は産油国間の“チキンゲーム”であり、このゲームに勝者はいません。油価暴落により、産油国の手取り収入が減少するからです。

 サウジアラビアの国庫歳入の約7割が石油収入と言われており、予算均衡油価は約$80、経常収支均衡油価は約$55と高い水準になっています。
 油価低迷により石油収入が激減すれば社会不安も増幅するでしょう。

 今回の油価暴落は露・米・サウジアラビアにとりロス・ロス・ロスの三方損の関係になるので、筆者は早晩手打ちすると予測しています。
 一方、遠藤誉筑波大学名誉教授は3月20日付ニューズウィーク誌の中で「OPEC+会議決裂後の油価下落においては、エネルギー大消費国の中国が最大の受益者になるだろう」と論評しております。

 慧眼なるかな遠藤誉教授。筆者は遠藤誉教授の見解は正鵠を射ていると考えます。

 とすればなおさらのこと、ロシアとサウジアラビアは直ちに協調減産交渉を再開することが自国の国益に適うことになりましょう(もちろん米国にとっても)。

■ エピローグ 愚者は経験に学び、賢者は歴史に学ぶ

 ロシア財務省の公式発表では2020年3月1日現在の国民福祉基金残高は1231億ドルですが、上述のとおり赤字予算に補填すれば、その分、年金補填や新規プロジェクト用原資は減少します。

 年金が減額されればプーチン大統領の支持率は下がり、社会不安が増幅します。ですから、国民福祉基金を赤字補填用に大規模充当することは実務上困難です。

 2020年のロシア国家予算案想定油価はバレル$42.4ですから、油価$45~$50程度ですとロシアにとり心地よい油価になります。
 現に、プーチン大統領はそのように発言しております。

 しかし予算案想定油価のバレル$42.4を割ればロシアにとり一大事であり、現実はそうなりました。
 今から30年ほど前のソ連邦崩壊前夜、油価はバレル$10台の低水準で推移しており、瞬間的には$10を割りました。

 石油・ガス収入に依存していたソ連邦は、この油価低迷時期に崩壊。ソ連邦の盟主ロシア共和国はソ連邦崩壊後、ロシア連邦として独立しました。
 30年後の現在、バレル$10前後ともなれば、今度はロシア連邦が崩壊するかもしれません。

 プロイセンの鉄血宰相ビスマルク曰く、「愚者は経験に学び、賢者は歴史に学ぶ」。
 この産油国間の“チキンゲーム”に勝者はおらず、産油国は全員敗者になります。
 ゲームの参加者が愚者になるのか賢者になるのか、我々は早晩、知ることになるでしょう。

 杉浦 敏広
*******************************************************************

 引用以上

 良質の記事である。
 産油各国の、油価に関する固有の事情が分かりやすく説明されており、今後の油価の動向について根拠のある判断材料を示すものだ。
 かつては、日本の官僚もメディアも、この程度の情報分析力は、基礎教養として、ありふれたものだったが、安倍政権登場後、いずれも著しく質が低下し、「なんで、こんな程度の低い連中が国を動かしているのか?」と驚愕するレベルに落ち込んでいた。

 理由は、自分の栄誉ばかり求める安倍晋三が登場し、人事権を官邸が確保したことを前提に、政権への忖度ばかりで官僚たちが疲れ果てて、もはやコンプライアンスも正義も、まともな判断力も失ってしまい、前川喜平のような有能で頭脳明晰な人物が安倍官邸によって追放されることで、希望も意欲も失ってしまっているのだろう。

 メディアは、上層部が安倍官邸に事実上、買収され、やはり政権への忖度記事しか書けないため、若手の有能な記者たちが絶望して、やる気をなくしているのだろう。
 かくして、安倍政権登場後、気骨のある記者は片っ端から追放され、あらゆる行政とメディアが劣化の一途であり、見るべき記事もなくなってしまい、メディアから学ぶこともなくなっていたが、今回、久しぶりに有能な記事を見つけた。

 この記事の指摘を、まとめてみよう。
 
 現在、石油価格が下落している本質的な理由は、
①OPEC内部の、サウジとロシアの対立により、増産の歯止めが効かない状態であること。
② 新型コロナウイルス肺炎のパンデミックにより、各国が工業的生産活動を停滞させたことで、石油需要が大きく減衰したこと。

 ロシアが、どうしてもOPECの減産基調に従えなかった本当の理由は、アメリカのシェールオイル産業潰しを目的としたものではない。
 これ以上の減産を行えば、石油採掘活動の再開が物理的に困難になる事情があるからだ。
 理由は、ロシア産原油に多量のワックス分が含まれ、これが流動性を失うと、パイプライン内部で固着し、ちょうど動脈硬化のような症状でパイプが詰まってしまうからだ。
 ロシアのパイプラインは、一定量の原油通過による流動性を確保する必要があり、減産ができないのである。

 ロシア経済は、油価に依存しており、油価が下がれば経済的余裕を失うため、当然、油価下落を阻止する減産交渉は必然であり、現在、サウジと齟齬が生じているが、これを早晩解決しないと、ロシア経済が破壊されてしまう。
 したがって、ワックス分の固着を防げる送油量を確保できれば、減産に応じることができるため、この送油量を確保できる前提で、減産が実現する必然性があり、したがって原油価格も上昇してゆくことになる。

 ロシアの油価は、バレル42ドル程度に設定されていて、これ以上下げることはできない。
 アメリカのシェールオイル産業の採算点は、バレル40ドル程度なので、これ以下に油価が落ち込むと、産業基盤が崩壊し、大量のシェール産業倒産が発生する。
 3月下旬の油価は、バレル30ドルを割り込み、20ドル台で推移している。これによって、アメリカのシェールオイル産業は風前の灯火であり、大規模な倒産連鎖が避けられなくなっている。

 サウジアラビアも、石油代金が国家予算の7割を占めており、バレル55ドルを前提に予算計画を立てているため、これ以上の増産チキンレースをすれば、国家経済が崩壊する恐れがある。
 いずれのベクトルも、再びOPECの減産交渉を支持する方向に向かっている。

 しかし、問題がある。
 アメリカのシェールオイル産業が、大規模な倒産連鎖を始めれば、当然、ドイツ銀行などが発行しているCDS・CLOなどレバレッジのかかった保険的証券への支払いが発生するが、この規模が巨大すぎて、発行元のドイツ銀などがデフォルトを起こす事態が避けられないことだ。
 これによって、歴史的な規模での世界的な大恐慌、リーマンショックの100倍といわれる金融危機が発生する。

 すると、石油を扱っている世界の企業群が、現物の石油を債務に充当することになり、世界的な原油安を劇的に加速する可能性がある。
 こうした問題は、現在のところ、世界的にどのような影響をもたらすのか、計算不可能な規模になっていて、何が起きるのか、分かるものはいない。
 考えられるのは、人類史上最悪の世界大恐慌に突入する必然性だけだ。

Appendix

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