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2009年10月13日 ●大恐慌の本当の意味 その4

カテゴリ : 無題


 人間社会が運営される本質とは何か? それは、「必要原理」である。
 人々は自らの子孫を伝えるために生活し、必要な物資を求め、労働し、助け合って社会を運営してきた。人類は社会生活を営み始めてから数十万年のあいだ、共同して苦楽を分かち合い、手を携えて生き抜いてきた。

 ところが、約250年前に勃興した近代資本主義が、こうした社会のあり方を根底から変えはじめた。
 「必要なものを必要に応じて生産する」
 それまで社会を支えてきた、この経済原理は、1760年代、イギリスを中心に勃興した綿布・毛織物生産工業の劇的な進歩によって一変してしまったのだ。
 このとき、社会経済の原理は、「生活の必要」から「金儲けの効率」へと変わり、ここに資本主義が成立したのである。

 このころ紡績機械の改良が急速に行われ、水力や蒸気機関により大量の安価な布が生産されることによって、「必要としないもの」まで産み出されることになった。これを「余剰生産物」という。
 この余剰生産物がもたらしたものは何だったのか?
 生活に必要な衣類よりもたくさんの衣類が生まれ、それが商品を産み出すことになり、それを売って余剰資金を成立させることになった。
 これこそ資本主義の本質であった。

 人々は争って商品を購入し、新しい、美しい衣類を着て見せびらかすことに夢中になった。クローゼットを造り、生涯に必要な衣類の数十倍もの衣類を貯め込むことになった。補修しながら使っていたものを簡単に捨ててしまうようになった。
 つまり、人々は、はじめて生活の必要性を超えて「贅沢・浪費」を知ったのだ。
 同時に、「商品を必要とする人たちのいる遠くに運んで売る」という「貿易・運送」と「商業」が成立した。

 これらは不可分のものであり、実は同じ「余剰資金」という原理によって生まれたものであることを理解しておかねばならない。ということは、贅沢・浪費が消えれば運送・貿易、商業も一緒に消えるという意味なのである。
 このことは、今、大恐慌のなかで起きている事態を見れば一目瞭然であろう。大衆からカネが消えて、贅沢・浪費の余裕のなくなったために商業も崩壊している。高速道路はガラガラに空くようになったではないか? 港も空港もガラガラだ。
 金持ちが強欲に走って大衆にカネを渡さなくなったために余剰資金が消えた。これで、自分たちにカネを生んでくれていたニワトリ、つまり商業・運送・貿易も同時に絞め殺してしまったわけだ。エサをやらずにニワトリに卵を産ませることはできないのである。

 最初、紡績工場は集落全体のものだったが、それが大きな利益を生むことを知った人々は、利益を独占するために個人で工場を作るようになり、「工場の所有者、経営者」が登場することになった。
 それが最初の「資本家」であった。おおむね、資本家の最初は、資産の多い封建領主や林業家・呉服店主・造り酒屋などである。誰でも資本家になれたわけではない。金持ちになることができたのは金持ちであった。

 資本家は余剰生産物を手にすることになり、それを遠い地域に輸出して大きな利益を生みだすようになった。そうして生まれた「余剰利益」が、資本家たちを肥え太らせ、ますます贅沢欲をかきたて、それを見た大衆も、贅沢に憧れるようになった。
 こうして、みんなが助け合って平等に生きてきた社会に、経済力の格差、貧富の差別・序列が生まれることになった。
 さらに、人々が、「自分もあのような贅沢な生活をしてみたい」と夢を抱くようになり、贅沢や金儲けが正しいことであると正当化されていった。

 こんなメカニズムによって、資本家が大きな富を蓄え、政治家をも支配するようになり、ますます自分たちの金儲けシステムを強固な政治体制に作り替えていった。これが資本主義国家の成立である。
 そうして、資本主義は国家ぐるみとなり、金儲けのために戦争まで行うようになった。武器を輸出する産業ができれば、それを消費する戦争が欲しくなったわけだ。

 資本主義の本質とは何か? それは、「競争・市場原理」である。
 しかし、人間社会が本当に必要としているものは、「必要原理」なのである。
 この二つの決して相容れない、矛盾した原理が対立し、世界は競争・市場原理に支配されるようになった。
 だが、強欲がぶつかりあう果てに、デリバティブやレバレッジ、CDSといった狂気の金融商品を生みだし、市場原理はタコが自分の手足を食べるように自らをも襲い、食いつぶしてしまったのである。

 必要原理が勝って競争・市場原理を追放、破壊したのではない。市場原理が自滅したのである。これが、今起きている大恐慌の本当の意味である。
 資本主義が求めたものは際限のない競争と、際限のない金儲け、際限のない自然破壊・資源枯渇であって、人々の必要を満たして満足するものではなかった。それは、まるで集団自殺するために海に向かうレミングの群れのように、集団で破滅の道をひた走った。
 みんなが向かう先に何があるのか? 誰でも、うすうす分かっていたはずだ。だが、有限の資源を使い尽くした先にあるもの、需要が満たされた先にあるものを決して見ることなく、彼らはひた走るしかなかった。競争していたからだ。
 金儲け競争に熱狂するあまり、止まる、戻る、方向転換するという選択さえ許されなかったのである。競争をやめたら、それは資本主義ではない。企業は資本主義競争のなかでしか生きられなかったのだ。

 かつて、必要原理を主張した思想を「社会主義・共産主義」といった。これに対して、競争・市場原理を主張した思想を「資本主義」といった。
 これを学問的に規定した人がカール・マルクスであった。彼は、主著「資本論」のなかで、競争・市場原理の辿る道を克明に描き出し、その法則を明らかにした。
 そこで、資本主義が恐慌を繰り返しながら発展し、人間の強欲に導かれて どんどん肥大化し、最期には多国籍企業によるコングロマリットから、とうとう国家をも包摂した「国家独占資本」に行き着き、そこで大爆発を起こして崩壊すると予測したのだ。

 今、まさにマルクスの予測した通りの資本主義自滅が起きている。
 かつて、ソ連を中心としたマルクス主義をテーゼとする共産・社会主義国家群があり、この教育体制のなかで、資本論が教えられてきた。
 現在40歳以上の東欧ソ連圏の人たちは、ほとんど、この思想学問を学校で習っている。したがって、今起きている「大恐慌」が、結局、マルクスの予測した「資本主義の最終段階、国家独占資本の崩壊」であるという理屈を、みんな良く知っている。だから、権力の底辺で生活する多くの民衆は「来るべきものが来た」と受け止めていて、決して慌てていない。

 もちろん、東欧ソ連圏でも、政府権力と金融資本だけは別で、欧米圏と同じように投機に熱中し、あらゆる資産を崩壊させている。彼らはマルクス思想を官僚統制のために利用しただけで、まったく学んでいなかったからだ。
 ロシア政府は、ソ連崩壊時と同じように、すでに国家デフォルトに近い状態に至っている。それは、ロシアが資本主義国家になっているからである。
 中国は特別の状態にあり、それは別の機会に書くことにしよう。

 しかし、反マルクス主義であり、ソ連崩壊時に勝利の優越感に浸っていた資本主義圏の人たちは、本当に慌て、恐怖に震えている。
 「市場原理」を錦の御旗に掲げ、競争だけを唯一の経済原理にすれば、すべてうまくゆくとFRBやアメリカ金融資本は断言し、世界中に彼らの「新自由主義・市場原理」すなわちグローバルスタンダードを押しつけてきたのだ。
 日本では、小泉純一郎と竹中平蔵が、それを採用して「日本を金融立国にする」と宣言し、日本経済を市場原理に晒してみせた。
 その結果、どうなったのか?

 「カネを稼いだものが勝ちだ」
 と、世界は、そして日本社会も金融バクチゲーム、株、投機に熱狂するようになった。会社員や下町の主婦までもFX投機に夢中になった。
 地球を、人間社会をうまく機能させ、子孫に素晴らしい環境を伝えようなどと、誰も考えなくなった。バクチに手を出せば、どうなるか?誰も考えようとしなかった。
 「有限の資源が枯渇するなど知ったことか、地球環境が破壊されるなど知ったことか、社会が格差によって崩壊するなど知ったことか、なんでもいいからカネを手にすれば勝ちだ!」
 と多くの人たちが思いこみ、無我夢中で金融バクチに熱狂したのだ。そうして、目先のカネを稼いで、ブランド品を買い込み、高級車に乗り込んだ。

 もちろん、バクチというものは、最後に必ず胴元だけが儲かるように仕組まれているのである。最初に少し勝たせて、儲かるような幻想を仕組み、最後に巻き上げるのが常套手段なのだ。
 胴元は、金融にレバレッジ(テコ)という恐るべき仕掛けを持ち込んだ。それは100万円の資金しかなくとも、10倍レバレッジで1000万円の投機ができるというものだった。
 ほとんどの金融機関や個人投資家が、この詐欺に引っかかって身の丈の数十倍も投資し、最期にひっくり返されて、生涯かかっても返済不能な膨大な借金を抱え込むことになった。銀行は預け主に返金できないと国に泣きついて、税金での救済を求めたのである。
 個人は、どううすることもできなくなって、自殺以外の選択肢が残されていない。1929年の大恐慌時、「ウオール街には人の雨が降った」と言われた。それは全財産を失った株屋が高層ビルから飛び降り続けたからだ。
 今また、それが再現されようとしている。首都圏の電車が毎日のように止まる理由の大部分は、飛び込み自殺によるものだ。

 投機で資産を減らした企業経営者は何をやったのか?
 日本の会社が潰れている本当の事情は、「モノが売れなくなった」からではない。実は、投機に失敗したからなのである。
 雇用された正社員は、どんどんリストラで追放されるようになり、派遣社員、臨時雇用にとって代わられた。労働者の平均年収は400万円あったものが250万円に落ちた。今では、もっとひどい。
 日本の労働者は、大部分、日雇い労務者に転落させられたのである。一方で、経営側の利益は徹底的に優遇され、高額所得者は3割以上も減税され、収入は大幅にアップし、国民の所得格差は凄まじい実態になった。
 まさに餓死する労働者の脇を、数千万円の高級車が目もくれずに疾走する光景が登場したのである。

 だが、その高級車の後部座席の人もまた、労働者から最後の血の一滴まで搾り取ってしまったために、あらゆる集金システムが崩壊し、もはや電車に飛び込むか首を吊るしか選択が残されていない地獄に堕ちた。

 社会は地獄に向かって雪崩落ちている。
 こうした事態を、マルクスは正確に予測し、「資本主義は国家独占資本主義に向かい、そこで崩壊する」と指摘した。
 今、まさに、その状態だ。市場原理では、にっちもさっちもいかなくて、銀行を潰すことさえできず、大企業も銀行も税金で救済している。
 こんなものは市場原理ではない。「カネのなくなったものは淘汰される」のが市場原理であって、それを公的資金で救済するとなれば、それは社会主義なのである。

 市場原理は崩壊した。すなわち資本主義は崩壊したのである。今後、再び市場原理を掲げた「新自由主義」が復活することはありえない。 市場は公的管理の下にコントロールされることになった。だが、この大恐慌を発生させた張本人、真の主犯であるゴールドマン・サックスをはじめユダヤファンドは、税金の救済を受けてぬくぬくと肥え太っている。 彼らは、弱小ファンドが崩壊するのを尻目に、CEOを財務相に送り込み、独占的に救済資金を手中にし、新たな投機を目論んでいる。
 

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