我々が知っておくべき原子炉の基礎知識


 我々が知っておくべき原子炉の基礎知識

 私が反原発運動に加わって、すでに40年以上経ているが、放射線については有資格者であり詳しくとも、原子炉の問題については一知半解の部分も少なからずあって、自分で基礎知識を再確認するとともに、関心のある読者にも、わずかでも啓蒙になればよいと考え書いておくことにした。

 まずは原子炉の基本だが、核分裂を起こす物質には、ウランやトリウム、プルトニウムなどがあって、これを核分裂を起こす濃度にまで濃縮してから中性子が当たると無限連鎖の核分裂が起きて巨大なエネルギーを放出する。

 このとき核燃料には自発核分裂という性質があって、勝手に自分で中性子を出すが、普通は弱すぎて連鎖しない。しかし中性子を遅くする減速材(普通は水)で包むことで、核分裂が連鎖するようになる。
 東海村の核燃料臨界事故も、バケツの水の中に核燃料を入れたために臨界が起きてしまった。

 しかし水には中性子を吸収してしまう性質もあって、核分裂を増大させる性質と、低下させる矛盾した両方の性質がある。
 水以外に中性子を吸収する材料として、カドミウムや銀、ハフニウム、ホウ素などあって、これで作った制御棒を核燃料の近くに差し込めば、核分裂反応は抑制あるいは停止させることができる。

 核分裂によって発生した熱は、高温高圧の水で熱交換器に送り込まれて熱を供給し、二次的な蒸気で発電用タービンを回す。
 いってみれば、ヤカンを火にかけて蒸気を発生させタービンに導くわけで、原理は原始的なものである。

[原子炉の種類] 


 日本では、軽水炉という、普通の水を使って中性子を減速させ、同じ水で炉心を冷却し、さらに外部に熱を供給するタイプが主に使われ、軽水炉は主に沸騰水型と加圧水型の二種類の原子炉がある。

 実は日本に最初に導入された東海原発は黒鉛炉という非常に特殊なタイプであったが、その非効率性と、放射能漏洩の危険性、導入目的が商業発電でなく核兵器原料の製造であることが問われ、これ以降では主目的が発電用途の軽水炉原発しか作られていないが、いずれも兵器用プルトニウムは抽出可能である。

 重水炉=中性子の減速に重水を使うため核燃料のウラン濃度を極めて低くできるが、もの凄いトリチウムが発生する欠陥があるタイプの原子炉は、日本では作られていない。
 しかしCANDU炉という重水原子炉はカナダや韓国で使われている。これは核燃料の濃縮をほとんど必要としないので、高度な技術を必要とする濃縮設備を持たない国で使われている。

 軽水炉の意味は、ウラン235やプルトニウム239の核原料から出てくる高速中性子を普通の水で減速して、熱中性子(遅速中性子)に変え、中性子が核燃料に潜り込んで核分裂を起こしやすくなるということと、同じ水で炉心を冷却し、また熱媒体として熱を外部に取り出すというシステムのことである。

 これを黒鉛で減速すれば黒鉛炉、重水で減速すれば重水炉である。
 軽水炉には加圧式と沸騰水式の二種類があって、違いは原子炉内部を水で満たして熱交換器に熱水を送る方式が加圧式、これは制御棒が上から落ちてくる。
 沸騰水式は原子炉内部の下半分にしか水を入れず上は蒸気で満たされる、制御棒は下から上がってくるのである。

 軽水炉で核分裂をさせ、発生した熱を利用するために必要なことは

 十分な濃度に濃縮された(3~5%)ウラン235が含まれた核燃料棒を用意すること、100~200気圧の超高圧に耐えられる圧力容器を作ること。

 核燃料棒を圧力容器に挿入し、中性子減速材の役割を果たす水を入れるとウラン235から出た高速中性子が速度の遅い熱中性子に変化し、燃料棒のウラン235に吸収されて核分裂が始まる。

 放っておけば核分裂連鎖から臨界核爆発に至ってしまうので、ホウ素・カドミウム・ハフニウム・銀などで作った制御棒を入れて熱中性子を吸収させ、核分裂反応を止めたり一定のレベルに制御する。

 核分裂の制御=抑制には、制御棒以外に、一次冷却水に中性子吸収材であるホウ素(ボロン)を投入したり、沸騰水型の場合は、温度を上げて泡を発生させることで水の比重が下がり核分裂反応を低下させて抑制・制御することができる。

(フクイチメルトダウンで問題になったのは、溶けた原子炉にホウ素を大量に投入したものの、数千度に達する核分裂熱と崩壊熱で沈降して地下水で洗われ、ホウ素濃度が下がって再臨界を起こすという危険であった)

[加圧式原発の問題点]

 国内で稼働、もしくは稼働可能性のある原発で加圧式は
泊・大飯・美浜・高浜・伊方・玄海・川内である。若狭では沸騰水型が敦賀に一基ある以外は加圧式。

 加圧式の場合は、原子炉内が一冷却水で満たされ、加圧することで沸騰させずに水を160気圧、320度まで上昇させ、それを外部に取り出して蒸気発生器で二次冷却水と熱交換して、もの凄い蒸気を発生させタービンを回す仕組みである。
 この蒸気発生器は加圧式独自の構造で、沸騰水型にはついていない。
kaatusiki.jpg


 二次蒸気冷却水は、三次冷却水としての海水を取り入れた熱交換器に入り復水して蒸気発生器に戻るので、最終的に海水温を上昇させる。

 加圧式の問題点は、原子炉が超高圧高温であるため、圧力容器の劣化が起きやすいことが問題となる。玄海原発1号機では、脆性劣化が予想より早く進行したため、非常注水時に大爆発を起こす危険性が指摘され、九州電力は渋々、抵抗の末に廃炉に同意した。

 もしも核暴走事故が起きたなら、炉内に大量に生成されているトリチウムやジルカロイ溶融による水素が水素爆発を起こしやすい。
 冷却機能を失い、ECCSの作動もなかった福島第一では沸騰水型だったため、圧力容器の爆発は免れたが、もし加圧式だったなら、数百倍の被害が出ていた可能性があると指摘されている。メルトダウン事故でも沸騰水型に比べて炉心が破壊されるスピードは数倍以上といわれる。

 関西電力の加圧式原発の原子炉にはベント機能が設置されていないので、圧力容器内で水素爆発などが起きたら格納容器まで大爆発を起こす危険性がある。
 玄海一号機と同様に、40年近い長期運転による炉心金属の劣化が懸念されるし、もし炉心事故が起きたら破壊スピードは沸騰水型とは比較にならないほど激しく早いと指摘されている。

 さらに、核反応の周囲が軽水で満たされているため、出てきた中性子が水分子の水素に潜り込んで三重水素トリチウムを作り出す確率が非常に高まることで、蒸気で冷却する沸騰水型に比べて数百倍のオーダーでトリチウムが生成され、これを環境に放出しなければならないことである。
 ひとたび水分子なったトリチウムは、100年近くもの間、環境水として社会で用いられることになって、遺伝子障害を引き起こすリスクを持つ。

 玄海原発の場合は、年間100兆ベクレル、加圧水型原発は、いずれも、これに準じた環境放出になる。
 周辺地域にダウン症を85%増加させたとグリーンピースが告発したカナダのピッカリング原発では、年間400兆ベクレルを放出していた。


[沸騰水型原発の問題点]

沸騰水型原発は、東通、女川、福島第一第二、柏崎、浜岡、志賀、島根と主に東日本の原発に設置されている。

 このタイプは、炉心に入れる水は加圧水型の半分以下だが、同じように水を減速材として使用しながら、出てくる熱を外部に持ち出すのは水ではなく蒸気である。
 この蒸気が、そのまま外部タービンを動かす仕組みなので、熱交換で熱媒体を分離する加圧式に比べて炉心の放射能汚染がダイレクトに環境に放出されることになる。

huttousui.jpg


 軽水炉では構造上の欠点として核燃料棒にピンホールなどの損傷が起きやすく、一次冷却水は相当に放射能汚染を受けるといわれる。
 汚染される放射能の種類は、主に、トリチウムやヨウ素、そして希ガス類である。
 ガス体なので、一度、ベント弁から外部タンクに移動させ、そこで短寿命核種を減衰させてから、環境にそのまま放出しているといわれる。

 一次冷却水に含まれた希ガス類を環境に放出するのは、加圧式も沸騰水式も同じなのだが、汚染された炉心冷却水をそのままタービンで利用する沸騰水式の方がより環境汚染度が激しいことになる。

 しかし、加圧式では、ひとたびメルトダウン事故が起きたとき、沸騰水型に比べて損傷も事故の規模も巨大になると言われている。

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コメント欄から失礼いたします

福島の原発事故後放射能が怖いと感じ始め、ツイッターなどで情報を集めていて先生を知りました。

事故直後から避難の方法、方角など的確なアドバイスをされていたので、皆さんが見ていればいいのにと思ったものでした。

ただ、先生が北海道に行かれた際に郡山で食事をしたら札幌のホテルででしたでしょうか、髪の毛が抜け落ちて歯が歯槽膿漏のようになったとの記述がありました。
当初福島はたった一回の食事で当日の夜にそんな大変な症状が出てしまうほど被曝してしまったのかと福島の方々は大丈夫なのだろうかと心配しておりました。

その後先生のその発言に異を唱える発言がありましたが先生はそんな事を言った覚えはない、証拠を見せろとおっしゃったのですが、確かに発言されていましたのでここは先生になぜこのような発言をされたのか是非お聞きしたいと思いましてコメント欄から失礼させていただいております。

先生のツイッターのアカウントが残念ながら消滅した今、ブログの執筆でお忙しいとは思うのですがお時間のある時にでもご回答いただければうれしく思います。

今後も陰ながら応援させていただきます。

エトウヒロキ

ありがとうございました

沢山のご丁寧な説明を教えて下さって有り難うございます。

東海アマさんは素晴らしいです!

東海アマさん、こんばんは。
海より深い知識、恐れ入ります。
アマさんの放射能の知見は驚くばかり!ア
マさんには安全デマを流す連中も驚きます!いつ
死んでもおかしくない現状を考えるとおいそれと
ねてなどいられません。これからも日本のために声を出し続けてください!
よろしくお願いいたします。

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