温泉三昧 少し外れて

 温泉三昧 少し外れて

 私が山歩きを志したのは、まだ10代の頃、1970年前後で、立川・国立に住んでいたから、毎週日曜になると、雨だろうが雪だろうが、青梅線に乗って、奥多摩の山々を2.5万図や5万図が赤鉛筆で真っ赤になるほど登りまくった。

 氷川や数馬なんて地名を聞いただけで、今でも熱い思いがこみあげてくる。
 当時は、どんな山奥にでも、たくさんの住民がいて、バス便も多数あって、今よりはるかに便利だったし、同じルートを歩く登山者も多くて、すぐに仲良くなった。

 それから、だんだん遠くの山を目指して、土曜日は塩山やら土合やら、清里やら茅野やらにも出向くようになった。
 アルプスや八ヶ岳の3000m前後の峰にも日帰りで足を延ばすようになり、ある日、気づいたら深田百名山のかなりの数を登ってることに気づき、どうせなら全山完登を目標にしてみようと思い立ち、それからは意識して百名山を登り始めた。

 深田百名山は全国にまたがっているので、交通と宿泊施設をどうするかが頭と懐の痛いところで、結局、小さなバンを買って、車内で寝られるようにして、前夜までに登山口に着いて、翌朝早朝から登るというパターンに落ち着いた。

 朝の5時前に主発すれば、ほとんどの山では昼頃に下山することになり、午後に、多少の余裕が生まれるので、何をするかといえば、疲労回復がてら地元の温泉を探して入ることになる。

 結局、深田百名山は1990年頃、とりあえず完登したのだが、当時、山頂まで行くことのできない立入規制のある火山が、浅間や焼岳などいくつかあって、そんな山は山頂を踏んでいないので、これからの課題として、2018年現在は、二巡目を楽しんでるところだ。

 こうして、全国の温泉地にも足を延ばすようになり、通算では数百回ではきかないくらいの全国の温泉に入浴することができ、温泉評論家ぶって知人に紹介することも多くなった。
 そんなわけで、私も温泉については、少々、小うるさくなって、自分の経験した「良い温泉」を読者の皆様に紹介したいというわけである。

 もちろん私のことであるから、一泊うん万円もする豪華な食事付きの旅館などには何一つ興味はなく、秘湯とはいっても、「全国秘湯を守る会」のような、胡散臭い金儲け温泉を紹介するつもりもない。

 秘湯というなら、これくらいであってほしいレベルは?
 例えば霧島連山、韓国岳に、えびの高原から入る廃道があって、途中の沢に温泉がたくさん湧いていて、自分でコッヘルなどを使って砂をくみ出し湯船を作って入る温泉があった。
 ユスリカ幼虫の赤虫がもの凄くて、全体が赤く見えるような温泉だが野趣満点。これまで入った温泉でも真の秘湯と呼ぶにふさわしいものだった。

 ちなみに、過去45年の温泉三昧のなかで、いわゆる「薬効」=水虫や乾癬など難治性の皮膚病や癌などに明確な効能のある温泉のなかでは、私の知る限り、霧島火山群のなかでも活動性の強い、新燃岳の山麓、国民宿舎・新燃荘の硫黄泉が最高ではないだろうか?

 ただし、この温泉は、すさまじく強烈な硫化水素泉で、これまでも入浴中の客をたくさん硫化水素中毒で殺していて、入浴が命がけであるという点で秘湯の名に恥じぬものである。

 大雪山の登山道近く、裾合平にある中岳温泉も自分で湯船を作って入るタイプで、いつヒグマが出てくるか分からないスリルもあって、これも野趣満点。
 後に自衛隊員が湯船を作って自然保護法で検挙されたニュースもあったような気がする。
 最近は、登山地図からも除外されていることが多いようだが、たぶん、まだ自然湧出の源泉は健在であろうと思う。

 北海道には、カムイワッカのような真の秘湯がたくさんあるが、いずれもヒグマの脅威に晒されながら入浴するものが多く、命がけ入浴という誉れ高き秘湯の名声を授与されているものばかりだ。
 知床のカムイワッカには三回訪れて川の流れのなかで入浴できたのは一回だけ、後は通行止めだった。付近のヒグマ密度は日本一であろう。

 薬効という点では、屈斜路湖畔の川湯温泉のもの凄い酸性硫化水素泉が素晴らしく、新燃荘温泉と対峙する横綱級かもしれない。
川湯は爪白癬なんかに悩んでいる方には本当にお勧めである。たぶん数回入浴で完治するだろう。

 十勝岳登山口にも素晴らしい薬効温泉があったが、噴火の溶岩流に呑まれてしまったと聞いた。もう地図にもないが、記憶では「黄金」と言ったような気がする。
 
 交通機関が整備され、電気が来ているようでは秘湯のはずがない。秘湯というなら、最低30分以上歩いて、夜間は石油ランプ、電気がないというのは最低条件であろう。

 昔は黒部渓谷にも、たくさんの真の秘湯があった。
 黒薙温泉は、トロッコ電車に乗ってトンネルの中の駅で降りて30分以上歩いてたどり着いた。これも深山幽谷の秘湯だが、交通機関も電気もあるという意味で、誰でも行きやすく、今では秘湯度が落ちた。
 しかし宇奈月温泉の源泉なので、効能は非常に高い。「お肌の湯」とも呼ばれる。

 名剣温泉は高額で勧めない。最奥の祖母谷や欅平の温泉は良質で宿泊も安価。

[渡合温泉のこと]

 私が住む中津川市にも秘湯ランキング上位クラスの渡合温泉がある。
 ここは住所では中津川市加子母地区なのだが、通行は付知町からしか入れない。1982mの小秀山南麓にあたり、周囲の山々も1600m前後あって、正真正銘、深山幽谷のまっただ中という雰囲気である。
 玄関脇が高時山の登山口になっている、。
 ここではカモシカや熊など、当たり前に出てくるし、ムササビなど珍しい日本固有種も多いので、動物写真を撮影するロケーションとしても最高ランクであろう。
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 この温泉を有名にしたのは、1970年代の山渓に温泉登山のシリーズを書いていた熊さんという作家が、渡合温泉をランキング日本一にしたからで、おかげで、当時、予約が取れなくなって困った記憶がある。
 当時は、渡合までトロッコ電車の軌道を歩くしかなく、付知から5時間もかけて歩いたと思うが、今では車道があるので、土砂崩れさえなければ転落の恐怖に包まれた怖い崖道を走るだけでいい。

 温泉は、ややぬるっとした鉱泉で、それほどインパクトがあるわけでないが、深山の雰囲気に加えて、電気が通ってないので、夜間照明は石油ランプを本当に使っている。
 冷蔵庫が使えないので、すべての食材は、その日に仕入れて、その日のうちに調理し 提供されるので、新鮮で素晴らしいものばかりだ。
 一度は宿泊しておかないと秘湯マニアの話題に加われないことになる。

 [乗鞍高原温泉のこと]

 今回、これを書いているのは、実は乗鞍高原温泉から帰宅したからだ。
 私の居住地の近辺で、温泉らしい強烈な硫化水素泉は、乗鞍高原が筆頭である。
 決して秘湯ではないが、皮膚病に対する劇的な効能があって、水虫なんか一発治癒である。たぶん癌にも著効がある。

 若い頃は山スキーに凝ってたので、毎年3月~5月頃、御岳や乗鞍の山頂にスキーを担いで上がり、よく滑降したもので、乗鞍から冷泉小屋を経て滑り降りると乗鞍高原温泉にたどり着く。

 御岳の常宿は飛騨側にある濁河温泉の嶽の湯で、3月に木曽側に滑り降りるため宿泊したら、女将さんに泣いて止められたことがある。
 3000mの山は、春先でも、変化の激しい、恐ろしい氷雪の連続で、もしも転倒したら止めることができないまま立木や岩に激突して命を落とすことがある。
 私も王滝頂上から滑ったとき氷の洗濯板で転倒したものの、幸いハイマツに突っ込んで止まり無事だったことがある。

 乗鞍は、割合やさしくて、山頂部以外は凍結が少なく、木立の中に明瞭な山スキールートが設定されていて、40年前頃は、全国の山スキー好きが集まってきて、スキー場付近の温泉に宿泊したものだ。

 本来は、スキー宿が目的だった温泉地だが、泉質がずばぬけて良いことから、今ではスキー客より、温泉目当ての客ばかりになっている。
 行政区は松本市だが、昔は安曇村大野川地区と言った。
 ここから白骨地区にかけて、明治時代は最強と謳われた山岳猟師たちが暮らしていて、道なき上高地や北アルプス主峰の案内人となった。
 また女工哀史で有名な、高山から野麦峠に抜ける山道もここを通っている。

 明治中期に来日したウオルター・ウエストンは著書「日本アルプス登山と探検」のなかで、上条嘉門次ら猟師を、勇気、優しさ、知恵、節度、あらゆる行動力において、これほどの人々はいないと激賞していて、すばらしい人間性の人々が多かったことを記している。

 今の乗鞍高原温泉街を経営する旧安曇村の人たちは、もちろんウェストンの激賞した猟師たちの直接の子孫で、私が乗鞍高原に通う大きな理由の一つにもなっている。
 人間性が、とても素朴で素直、飾らずに、誠意に満ちた人たちばかりで、とても気分が良いのである。

 乗鞍高原温泉の素晴らしい温泉に入るため、私はすでに20回程度は通っていると思う。 宿は、緑山荘・サウスコル・牧水苑・さつき荘など、あちこち宿泊しているが、今回は、高山祭でいっぱいになっていて、どこも泊まることができず、やっと探し当てた高原駐車場に近いロッジ蘭山に二泊した。

 宿泊料金は7500円くらいで、とても安く、食事も素晴らしい。
 ただ、経営者は「うちが一番ボロくて申し訳ない」平謝りで、確かにトイレが遠くて狭かったり、カメムシが多くて辟易するなど問題もあるが、もちろん温泉は超一級品、露天風呂は、おそらく全乗鞍高原のなかで最高のロケーションではないかとさえ思った。
 長時間入浴のため湯温がぬるく設定してあることも良い。

 ロッジ蘭山の露天風呂
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あと、日本百名山踏破ついでに全国のたくさんの温泉を回ったなかで、とても強い印象が残っているのは、やはり東北の温泉である。

 とりわけ素晴らしいのが福島の温泉だったが、だったと言わねばならないのは、もちろんフクイチ事故の影響で、放射能汚染されてしまった場所が多いからだ。

 私が若い頃から、何度も行ったのは、新野路温泉、相模屋と横向温泉、中ノ湯である。
 相模屋の温泉は、まるで火山の噴気孔のようで迫力満点、露天風呂も、噴気の中を進んでやっとたどり着く野趣の宝庫といえそうな温泉だ。
 食事も素晴らしいが、事故後、放射能調査のため訪れて一泊したら、やはり急性のセシウムリンパ障害が出てしまった。
 今から考えれば馬鹿なことをしたものだが、一番危険な川魚の鮎を食べてしまったのだ。日本山岳会、植村直己らの足跡が記された本当に素晴らしい温泉だが、もう勧めることができないのが悲しい。

 横向温泉は、ひどくぬるい湯に一晩中浸かって寝ることのできる温泉だが、実は、中ノ湯には霊がいることでも有名、座敷わらしではなく、浸かってるうちに金縛りになったりする怖い霊である。
 元々、湯治場で、食事は持参して自炊するので、安全な食料を持参すればよい。
 しかし混浴で、なかなか風情があり、なによりもの凄い便通の湯である。その効能は凄まじいというしかない。
 下痢ではなく、いったい、どんだけ出てくるんだと思うくらい出る。
 経営者は、横向温泉本館の経営者の姉で、事故後体調を崩したと聞いている。今は営業しているか不明である。
 中ノ湯旅館

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 あと、ぬるい長時間浴の好きな私としては、越後の大湯温泉の奥にある、栃尾又温泉と駒の湯温泉を特筆しないわけにはいかない。
 
 いずれも泡が立ち上る炭酸の湯で、37度程度の湯に長時間浸かるのだが、浴槽で溺死する人が出たため、夜間入浴が禁止されてしまい、行かなくなってしまった。

 駒ノ湯山荘は、越後三山、兎岳の登山口にあたり、山屋には馴染みだと思うが、下山後の疲れを癒やすには素晴らしい泉質であった。

 まだまだ青森や岩手の温泉を紹介したいが、きりがないので、今回はこの程度で。




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